「計算機代数の基礎理論」長坂、岩根、北本、讃岐、照井、鍋島、共立出版, 2019.
- p55, line 14 の事例。ちょっと趣旨がよくわからないのだが、$p=5$, $f(x) = x^2+13x+42$, $g_0(x)=x+1$, $h_0(x)=x+2$, $d=3$, の場合に、$g_3(x) = x+6, h_3(x) =x+7$ は適格だと思うのだが、$g_3(x) = 7x+42$, $h_3(x) = 18x+1$ は、条件 $g_3(x) \equiv g_0(x) \mod p$, $h_3(x) \equiv h_0(x) \mod p$ を満たしていないように思う。
単元倍による不定性であれば例えば $g_3(x) = 6x+36$ のような事態を想定している?いや、おそらくもっと適切な事例があるのだと思う。
- 定理3-37. 十分性の証明。本の証明で正しいが簡潔にできそう。$\gcd(f,f') \neq 1$ とする。$g | \gcd(f,f')$ を既約多項式とする。$f(x) = g(x) h(x)$ と書ける。$f' = g h' + g' h$ と $g | f'$ より、$g | g' h$ である。$g'$ の次数が $g$ の次数未満であることから $g'$ は $g$ で割り切れないから、 $g$ の既約性より $g|h$ である。すなわち、$h(x) = g(x) k(x)$ であり、$f(x) =g(x)^2 k(x)$ となる。証明終わり。
- アルゴリズム5-1の中の $g_i(x)$ と、定理5-15の中の$g_i(x)$ は異なるものである。それぞれはそれぞれの subroutine の中で使われていて齟齬はないのだが、定理5-16 の証明に $g_i(x)$ が現れたタイミングでアルゴリズム 5-1 と書いてあるので、ついついアルゴリズム 5-1 の $g_i(x)$ と誤認しがちだが、ここの $g_i(x)$ は定理5-15 の $g_i(x)$ である。できれば異なる記号で書いたほうが親切では、と思いました。
- p144, line -10. 「すべて」。アルゴリズムを走らせると、最初の $g(x)$ に対しても、ある $\alpha$ に対する $g(x)-\alpha$ が分離多項式になる可能性がある程度あると思う。その分離多項式を用いて $f$ を2つの多項式の積に分けられるので次数が下がる。 $g,\alpha$ の「すべて」を走らせる必要があるのだろうか。
- p144, line -6. 「事前計算」。結局 $\mathcal{A}$ を求める時に、すべての $\alpha$ に対する $\gcd(f(x),g(x)-\alpha)$ を計算しているように思うので、どう効率的なのかがよくわからないです。
- p122, line 1. 分離多項式の定義。前のページの line -2 で「一部の $i$」と文章的に書いている。この「一部の $i$」 の趣旨は「全体でも空でもない」ということかな。数式を使うと、$1 \neq \gcd(f,g) \neq f$ ということで良いか?
- p122, line 5. 「$g(x)$」は「分離多項式」としたい。line 14 の $g(x)$ と、ここの $g(x)$ は異なるので、ここで $g(x)$ の文字を使いたくない感じがする。
- 同じ趣旨。3行目でも「$g(x)$ として $f$-簡約多項式を扱った」は「分離多項式として $f$-簡約多項式を扱った」とか「$f$-簡約多項式を分離多項式に用いた」のように書きたい。
- 同じ趣旨。4行目でも「$g(x)$ を無作為(ランダム)に」も「$h(x)$ をランダムに」としたい感じ。ただ、$h(x)$ はline 16 まで出てこないので、書きづらいけど。文字を使わないで、「ランダムに与えた多項式を用いて分離多項式を探索する」のように書くことも可能かな。
- p122, line 16. 「任意の」。任意の... が ... を満たす、と読めてしまうと誤り。
- p122, line 23. 「それら」。2行上の $h(x)^e\pm 1$ を指している。
- p123 の証明の最後の行。余事象を求めているところ、「$\chi_i(h^e-1)$ $(i=1,\ldots,k)$ の値がすべて等しく」なる確率を $(1/2)^k$ と積で求めている。一つ一つが $1/2$ であることは line 8 に解説済みであるが、「$i$ に関して互いに独立事象である」ということをどこかで示しているだろうか?