野村隆昭:複素関数論講義(共立出版)
- p256, 問題10.44 の解答。ならびに、p153 のヒント「要領よく計算」。
「$a$ を消去して、$\alpha$ で書き直す」のが見通しが良いように思う。
$f(z)=0$ は$z=\alpha$ を根に持ち、monic で定数項が$1$ なので、もう一つの根は $z=\alpha^{-1}$ である。つまり、$f(z)=(z-\alpha)(z-\alpha^{-1})$ である。$g(z)$ もおなじように考察すると、$g(z)=(z+i\alpha)(z+i \alpha^{-1})$ である。これに対して、「まるいち」の最後の2項をそれぞれ計算して行く。複素数を含んでいるものの、因数分解されている形なので、$\alpha$ の有理式として計算していって、面倒にはならない。しかも、和の2つの項の共通因数が早い段階で見えるので、気の利いた工夫をするよりは、機械的に計算して行けるように思う。結果は $J=\alpha^4/(1+\alpha^4)$ ときれいな形になる。むしろ問題は、これを $a=-(\alpha+\alpha^{-1})/2$ であるような $a$ で書き直して答えの式を得るところにあるかもしれない。
- 問題10.60(1).
$x=e^{t/4}$ と変数変換すると、(あ)$=\displaystyle \frac{1}{16} \int_{-\infty}^\infty \frac{t e^{t/4}}{1+e^{t}} dt$,
(い)$=\displaystyle \frac{1}{16}\int_{-\infty}^\infty \frac{t e^{3t/4}}{1+e^{t}} dt$ である。一般に、$0\lt a \lt 1$ に対して、 $\displaystyle \int_{-\infty}^\infty \frac{t e^{a t}}{1+e^{t}} dt$を計算する。問題10.58の積分路を使うのが良い。形式的には問題10.58の答えを $a$ で微分したものになる。あとで書きます。
- 問題10.60(2).
$x=e^t$ と変数変換すると、問題文の積分は、$\displaystyle \int_{-\infty}^\infty e^{\alpha t} \frac{t e^t}{e^{2t}-1} dt = \int_{-\infty}^\infty \frac{t e^{\alpha t}}{2 \sinh t} dt$ となる。例題10.52の積分路を使うと良さそう。
- 例題10.54. $x=e^t$ と変数変換する。$H(w):=F(e^w)$ と略記する。示すべき式は、$\displaystyle (1-e^{2 \pi i \alpha}) \int_{-\infty}^\infty H(t) e^{\alpha t} dt = 2 \pi i \sum_{0\lt \mbox{Im} \beta \lt 2 \pi} \mbox{Res}_{z=\beta} (H(z) e^{\alpha z})$ である。これを示すには問題10.58の積分路を使うのが良い。本の解法では $\delta \gt 0$ の取り扱いをする必要があるが、問題10.58の長方形の積分路ではその配慮が不要なので、作業が軽減される。また、長方形の左右の辺の長さが$2\pi$ と有限なので、その辺上での積分値が小さくなることを$F$に関する仮定の条件から示すには、p161, line 5, line 7 にあるように $H(z) e^{\alpha z}$ の値が小さくなることだけを見れば良い。(本の解法では、円弧BC の長さは長いので、簡単ではあるが計算を要する。)