野村隆昭:微分積分学講義(共立出版)
- 講義準備をした上での注意点。
- 著者自身によるページ
- page 13, 例題2.6. 「$\alpha=0$ の場合に帰着する」ということをまず宣言する。すなわち、$b_n := a_n - \alpha$, $t_n = \displaystyle\frac{b_1+\cdots+b_n}{n}$ と定義する.
ここで4つの主張を番号をつけて
(1) $\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n=\alpha$, (2) $\displaystyle\lim_{n\to\infty} b_n = 0$,
(3) $\displaystyle\lim_{n\to\infty} t_n =0$, (4) $\displaystyle \lim_{n\to\infty} s_n = \alpha$ と定める。このとき、$t_n = s_n-\alpha$ なので、(3)と(4) は同値、(1)と(2) は定義より同値なので、(2)$\Rightarrow$(3) が示せれば、目的である (1)$\Rightarrow$(4) が示せることになる。ここから教科書の「解」を$\alpha=0$ として読めばよい。
- page 14, 問題2.7. 同じ技術を使う。$b_n = a_n- \alpha$, $T_n = \displaystyle \frac{nb_1+(n-1)b_2+\cdots+2b_{n-1}+b_n}{n^2}$ と置くと、$S_n = T_n +\displaystyle\frac{n+(n-1)+\cdots+2+1}{n^2}\alpha$ となるので、$\alpha=0$ の場合に示せばよい。
ここで、$\displaystyle\left\vert S_n \right\vert \le \frac{n\left\vert a_1 \right\vert +(n-1) \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+2 \left\vert a_{n-1} \right\vert + \left\vert a_n \right\vert}{n^2}
\le \frac{n\left\vert a_1 \right\vert +n \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+n \left\vert a_{n-1} \right\vert +n \left\vert a_n \right\vert}{n^2}=\frac{\left\vert a_1 \right\vert + \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+ \left\vert a_{n-1} \right\vert + \left\vert a_n \right\vert}{n}$ となる。
$\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n=0$ ならば、$\displaystyle \lim_{n\to\infty} \left\vert a_n \right\vert =0$ であり、例題2.6 より、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\left\vert a_1 \right\vert + \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+ \left\vert a_{n-1} \right\vert + \left\vert a_n \right\vert}{n}=0$ なので、「はさみうちの原理」により、$\displaystyle \lim_{n\to\infty} S_n =0$ である。
- page 17, 問題2.19. 直前の注意「命題2.14 を繰り返し使って」には反するが、証明の途中で使われる式 $\displaystyle \lim_{n\to\infty} 3^{1/n} =3^0$ の成立根拠を、命題2.14 の証明のレベルで与えることは、ここでは期待されていない。
- p112, 例5.96. この例で、「被積分関数は、、、、を得る」というような議論、、、のように括弧をつけたい。(してはいけないことが何なのかが読み取りづらいと思われるため。)
- p154, 例題6.79. 答えの解釈。$1/n^3$の係数が複雑な形をしているが、正体は、$x_n = \displaystyle \left(n+\frac12\right) \pi - \frac1\pi \left(n+\frac12\right)^{-1} - \frac2{3\pi^3} \left(n+\frac12\right)^{-3} + o((n+\frac12)^{-3})$ となっているものを $n$ 冪で再展開したため、異なった項からの寄与が足されていることによる。
- p186, 例題7.24(1) の解。2行目で $J(x) = \displaystyle 4x^2 \int_0^{\frac12} \sqrt{1-t^2}dt$ と特定した後で一度、$I= \displaystyle \int_0^1 4x^2 dx \int_0^{\frac12} \sqrt{1-t^2}dt$ と書いておきたい。このあとは、$x$ の積分と$t$ の積分は相互に関係なく、それぞれ1変数の積分の問題である。(そして、教科書にはその計算が書いてある。)