斎藤毅「線形代数の世界」東大出版会 - 講義をした上での補足や注意点など。 - p20, 例1.4.7. line 4. 補足。従って $X$ が無限集合のときは、$K^{(X)} \subsetneqq K^X$. - p20, 例1.4.7 の最後の行(p20, line -3)の補足。つまり、$\{ e_x \mid x \in X\}$ は $K^{(X)}$ の基底である。 - p21, 命題1.4.9(2) $W\oplus W'$ は $W \times W'$ かな。 - p28, 例1.5.6. 証明に 系 1.4.10 を用いているが、系に挙げられているような基底が一組は存在することは、系では仮定されていて証明されていない。存在の証明には定理 1.6.7(つまりZorn の補題の応用)を使うことになる。この流れは明記されてない。(1.6 節を講義で省略する場合には、どの部分の説明が不十分であるかを講義担当者としては意識しておくことが望ましい。) - page 27, 定理 1.5.4 の証明の2行め。$V_m \subset V$ は $V_m = V$. - page 29, 定理 1.5.7 の証明の2行め。 「$n \ge 0$ に関する帰納法」-> 「$n \ge m$ に関する帰納法」。 次文「n=0 なら、n=m である」-> 「n=m のときは成立している」。 - page 37, 問題B1.6.1 の解答(page 236)の方針。その部分空間を 外延的記法で集合として書き切ることができる。 $\{ Q(X^2) (x^2-1) \mid Q(t) \in K[t] \}$. - page 40, 命題 2.1.3 vs page 45 命題 2.1.11. 前者では、$G: Hom(V,W) \rightarrow W^n, F: W^n \rightarrow Hom(V,W)$ だった。 後者では、$F: Hom(K^{(X)}, V) \rightarrow Map(X,V), G: Map(X,V) \rightarrow Hom(K^{(X)}, V)$ である。 なぜか、$V$ と $W$ が逆、$F$ と $G$ が逆になっている。そろえた方が読みやすい。 - p56, line -4 の $a_j \in K^m$ と、p57, line 2 の $a_j \in K$ は、異なるものであるが、同じ記号が使われている。 - page 61, line5. $V'$ は $W$. - p63, B2.3.5. の 1. 「$D$ の」行列表示 $A$ を求めよ、としたい。(2. に表記を合わせる。) - page 66, 系 2.4.7 $(1)\Rightarrow(2)$ の証明。 系 1.6.8(つまり選択公理の応用)をこっそり使っている。有限次元のときは、命題 1.5.10(3) を使えるのでそれが回避できる。 - 命題4.2.6.4の前半の証明。4.3節の言葉遣いを使えば、埋め込み写像$j: Kx \subset V$ が単射なので、その双対 $j^*:V^*\to(Kx)^*$ が全射、という流れで証明されている。つまり、補空間 $V=Kx\oplus \exists V'$ を使って、第1射影 $p$ を定義し、$(Kx)^* \ni g \mapsto g\circ p \in V^*$ によって、$j^*$ の右逆を構成することで $j^*$ が全射であることを証明している。 命題4.2.6.4 や命題4.3.6.2 では、「写像 $j: U \subset W$ が単射ならば、その双対 $j^*: W^*\to U^*$ は全射」という、系4.3.7.1 の片側が繰り返し証明されているが、あらかじめどこかでそれを取り出して証明しておけば、本体の証明はすっきりとする。 - 命題4.2.6.4の前半の証明。4.3節の言葉遣いを使えば、埋め込み写像$j: Kx \subset V$ が単射なので、その双対 $j^*:V^*\to(Kx)^*$ が全射、という流れで証明されている。(つまり、補空間 $V=Kx\oplus \exists V'$ を使って、第1射影 $p$ を定義し、$(Kx)^* \ni g \mapsto g\circ p \in V^*$ によって、$j^*$ の右逆を構成することで $j^*$ が全射であることを証明している。) - 命題4.3.6.2 の$(\mbox{Ker } f)^\perp \subset \mbox{Im } f^*$ の証明。$U:=\mbox{Im } f$ と略記する。埋め込み写像 $j: U \subset W$ が単射なので、その双対 $j^*: W^*\to U^*$ は全射である。これは、補空間 $W=U\oplus \exists W'$ を選び、第1射影を $p$ とした時に、$W^* \ni g \mapsto g\circ p \in U^*$ によって、$j^*$ の右逆を構成することで証明されている。さて、$g \in (\mbox{Ker } f)^\perp$ ならば、$g\circ f^{-1} \in U^*$ は well-defined である。上に示した全射性より、$\exists h \in V^*$ such that $j^*(h) = g \circ f^{-1}$. したがって、$g=g \circ f^{-1} \circ f = h \circ j \circ f = h \circ f = f^*(h)$. したがって $g \in \mbox{Im } f^*$. 命題4.2.6.4 や命題4.3.6.2 では、「写像 $j: U \subset W$ が単射ならば、その双対 $j^*: W^*\to U^*$ は全射」という、系4.3.7.1 の片側が繰り返し証明されているが、あらかじめどこかでそれを取り出して証明しておけば、本体の証明はすっきりとする。 - 命題4.2.5.2 の $(W \cap W')^\perp \subset W^\perp + W^{\prime \perp}$ の証明。 添字や $\prime$ のつき方や写像の命名を少し変更してみよう。まず、$W_1:=W \cap W'$ とする。補空間の選び方は、$W=W_1 \oplus \exists W_2$, $W'=W_1 \oplus \exists W_3$, $V=(W+W') \oplus \exists W_4$ とする。この時、$V=W_1\oplus W_2 \oplus W_3 \oplus W_4$ である。それぞれの成分への射影を $p_1,p_2,p_3,p_4$ とする。$p_1+p_2+p_3+p_4$ は恒等写像である。したがって、$f_i := f\circ p_i$ とすると、$f=f_1+f_2+f_3+f_4$ である。また、$f_3 \in W^\perp$, $f_4 \in W^\perp$, $f_2 \in W^{\prime \perp}$, $f_4 \in W^{\prime \perp}$ である。さて、$f \in W_1^\perp$ であれば、$f_1=0$ である。したがって、$f=f_2+(f_3+f_4) \in W^\perp + W^{\prime \perp}$ が示された。 教科書の記号との対応は、教科書の $W_1, W_1', W_'', p,q$ が、それぞれここでの $W_2, W_3, W_4, p_2,p_3+p_4$ である。