大学数学ことはじめ(松尾厚)の第III部(練習問題と研究課題)に掲載されている解答への補足
- 問題1.3(p208)。解説。 明示的には書いてないが、まずは のグラフを書いて、直感的に条件を求めることが大切である。以下の答案できちんと論証するのは、それができてからの次のステップである。「全射の定義域を広げても全射」「単射の定義域を狭めても単射」という事実を使うと、a,b に課せられている条件を途中から忘れることができるので、論証がスッキリして、誤りづらい。
- (1)(十分条件であること)。[-1,1]\subset [a,b] がわかったので、f|_{[-1,1]} が全射であることを示せばOKである。f|_{[-1,1]}: [-1,1]\to [-1,1] は全単射である。証明終わり。
- (1)(必要条件であること)。f(x)=1 となる x は x=1 だけである。f(x)=-1 となる x は x=-1 だけである。したがって、1,-1 が像に入っているためには、-1,1 \in [a,b] である必要がある。したがって、a \le -1 \le b, a \le 1 \le b でなければならない。この条件の一部を取り出して a \le -1 かつ b \ge 1。証明終わり。
- (2)(十分条件であること)。場合1。b \le -1 の時。この時、[a,b] \subset [-2,-1] がわかったので、f|_{[-2,-1]} が単射であることを示せば良い。f|_{[-2,-1]}: [-2,-1] \to [0,-1] は全単射である。証明終わり。
- 場合2。-1 \le a \le b \le 1 の時。この時、[a,b] \subset [-1,1] がわかったので、f|_{[-1,1]} が単射であることを示せば良い。f|_{[-1,1]}: [-1,1] \to [-1,1] は全単射である。証明終わり。
- 場合3。a \ge 1 の時。この時、[a,b] \subset [1,2] がわかったので、f|_{[1,2]} が単射であることを示せば良い。f|_{[1,2]}: [1,2] \to [0,1] は全単射である。証明終わり。
- (2)(必要条件であること)。場合1。a\lt -1 \lt b の時。教科書のように \delta を定義すると、[-1-\delta,-1+\delta] \subset [a,b] がわかったので、「f が[a,b] で単射でない」ことを示すには「f が [-1-\delta,-1+\delta] で単射でない」ことを示せば良い。この範囲で f(x) = -1 + | x+1 | である。従ってf(-1\pm \delta) = -1+\delta となる。。。そうか、ここはやっぱり教科書のように議論することになるかな。
- (2)(必要条件であること)。場合1。a\lt -1 \lt b の時。
この時 -1 \le a+1 \lt 0 \lt b+1 なので、\delta を定義するときに現れる |a+1| は1 以下である。したがって、
\delta=\min\{ -(a+1), b+1 \} と書いて良い。もちろん、この書き方だと \delta \le 1 であることや \delta\gt 0 であることが見辛いので、教科書のように記述するのも悪くはない。
- 研究1-2.
- 方針1。ここまで詳しく場合分けをして、しかも(2)(iii) で省略までするのであれば、普通に8つに場合分けして、
- 場合1。x \in A \cap B \cap C の時。x \in A \triangle B なので x は左辺に入る。x \in B \triangle C なのでも x は右辺にも入る。
- 場合2。x \in A \cap B \cap C^cの時。x \in A \triangle B なので x は左辺に入らない。x \notin B \triangle C なので、x は右辺にも入らない。
- ....
- 場合8。x \in A^c \cap B^c \cap C^cの時。x \in A \triangle B なので x は左辺に入らない。x \in B \triangle C なので、x は右辺にも入らない。
証明終わり。としてしまったらどうだろうか。
- 方針2。\mathbf 1+\mathbf 1=\mathbf 0という新しい演算規則を導入して結合法則などに言及しているが、やりたいことに比べて大げさな感じがする。関数を使いたいのであれば、加法的に書くのではなく乗法的に書いたら中学生の数学の範囲にとどまる。
シンプルに \varphi_S(x) = 1 \quad (x \in Sのとき)、\varphi(x) = -1 \quad (x \notin S のとき)、と定める。この時、\varphi_{A \triangle B} = \varphi_A \varphi_B となる(要証明、教科書では「容易に確認される」と書いて省略してあるが。)。これを用いると、\varphi_{(A\triangle B) \triangle C} = \varphi_{A\triangle B} \varphi_C = (\varphi_A \varphi_B) \varphi_C=\varphi_A \varphi_B \varphi_C となる。同様に \varphi_{A\triangle (B \triangle C)} = \varphi_A \varphi_{B \triangle C} = \varphi_A(\varphi_B \varphi_C) = \varphi_A \varphi_B \varphi_C となる。証明終わり。
- 問題2.1(p211)。教科書の解答は本格的過ぎるように思われるので、もうちょっと安直にやってみよう。成り立つ方は y を具体的に取り、成り立たない方は x を具体的に与えてしまえば簡明である。
- (a) の場合1。s\le t の時。y=(s+x)/2 とすると、(a) が成り立つことがわかる。
- (a) の場合2。s \gt t の時。x=t とすると、(a) が成り立たないことがわかる。
- (b) の場合1。s \lt t の時。y=s とすると、(b) が成り立つことがわかる。
- (b) の場合2。s \ge t の時。x=(y+t)/2 とすると、(b) が成り立たないことがわかる。
証明終わり。
- 問題2.2(4)の後半。「\varepsilon\gt 0 が (0,1]の下限ではない」ことの証明。教科書では直接証明しているが、(2)(3) を用いて次のようにも議論できる。これが出題者の意図ではなかろうか?
- \varepsilon \gt 0 が仮に (0,1] の下限であれば、\varepsilon \le 1 である。
したがって、\varepsilon \in (0,1] なので \varepsilon は (0,1] の最小値でもある。それは (2) に矛盾する。証明終わり。
- 問題2.4の後半。下限。\inf \left\{ \frac{(6t+8)t}{t^2+1} \mid t \gt 0 \right\} =0 を証明すれば良い、といったん page 212 line -7 あたりで宣言しておきたい。
- 問題2.5(1)。教科書の解答で差し支えないが、=1-\inf \left\{ \frac1n \mid n \in \mathbf{Z}, n\gt 0 \right\} として、第2項を計算すれば良い。この教科書では第2項の値が0 になることは本文でも確認問題でもどこでも取り扱われていないのかあ。。。
- 研究2-2の(方針2)の後半。「\mathbf{N}_0 の空でない部分集合 B が最小元を持つ」ことの証明。
この教科書では、「有限集合は最小元を持つ」ということに触れられていない。それどころか「有限集合」の定義がない。(したがって、\min\{a_1,a_2,\ldots,a_n \} = \min\{a_1, \min\{a_2,a_3,\ldots,a_n\}\} のような議論もない。)まあ、でもそれは使っていいことにしよう。
- 「\mathbf{N}_0 の空でない部分集合 B が最小元を持つ」ことの証明。b \in B とする。B_1 = [0,b] \cap B, B_2 = [b,\infty) \cap B とする。\mathbf{N}_0 = ([0,b] \cap \mathbf{N}) \cup ([b,\infty] \cap \mathbf{N}) なので、B=B_1 \cup B_2 である。b \in B_2 であるから、b=\min B_2 である。B_1 が空集合であれば、\min B = \min B_2=b。B_1 が空集合でなければ「B_1 に最小値が存在する」ことを用いると、\min B = \min\{ \min B_1, \min B_2 \} なので、B に最小値があることが示せた。証明終わり。
- 途中で使った「B_1 に最小値が存在する」の証明。つまり C が [0,b] \cap \mathbf{N}_0 の空でない部分集合であるときに、C に最小値が存在することを示せば良い。うーん、これはC が有限集合なので、ぐらいの軽い議論で済ませたいなあ。きちんと証明しようとすると結局、教科書と同じように数学的帰納法で示すのかあ。それはこの段階で要求しなくてもいいような気がする。
- 確認2E(p171)の解答。3.4 節(p19) の記載に従って、Imf を決定してから議論した方が、(1)(2)(3)に関しては、見通しが良いのではないだろうか? (1) Imf=(0,1]. (2) Imf=[-1/2,1/2]. (3) Imf=[0,1). (4) Imf=\mathbf{R}. なお、