雪江明彦「代数学1」日本評論社
- 講義をした上で気がついた点。
- なお、著者自身の正誤表のページあり。
そこに反映されているものは # と書き、このページの後ろにまとめ直しました。
「代数学2」
- p27, 中程に登場する が索引にない。索引では \mathbb{F}_q, p187 のみがリストされているが、p27 も引用したい。
- p64, 補題1.11.33 の証明の最後の「したがって、、、、なので」。新しい多項式r(x) を持ち出す必要がない。「したがって、b= a \cdot a^{-1} b \in A, h(x) = b \cdot q(x) \in A[x] となり、f(x)=g(x) h(x) なので」と改変できる。
- p66, line -5. d は平方数ではない。
- p67, line -5. 「4=a^2 c^2」。直前の b=d=0 を冒頭の式 2=(a+b\sqrt{-1})(c+d \sqrt{-1}) に代入すると、2=ac が得られるので、「2=ac」が良いと思う。
「代数学2」その他:
- p22, 例1.3.40. 補足。なお、I+J=\mathbb{Z} の状況を、p33, line 1 では「互いに素」と呼んでいる。
- p51, line -5. 「素イデアル」とあるが「極大イデアル」では?付記:やはり、\mathbb{C}[x,y]の素イデアル(x)は、点ではなく、直線(y 軸)と考えたい。
- p65, 定理1.11.35 の証明の5行目。(g(x)) は g(x) A[x] と書いたらどうか。環が2通り出てくるので、生成するイデアルという記号の意味があいまいになるため。
- p70, line 5. 「次の判定法」。この直前の p69, line -7 に「最初の判定法」があるので、しばらく考え込んだが、この「次の」は next ではなく、following の意味のようである。おそらく、1つめの判定法の話が p71 の例1.12.8 までで、2つ目の判定法の話は命題1.12.9 の2行上から始まるのであろう。できれば、「次の判定法」という言い方を別の言い方(例えば、「次の命題に挙げる判定法」)に改めたい。また、p71, line 16 の冒頭に、「2つ目の判定法の話が始まるということの分かる(つまり、最初の判定法、というp69 の台詞との対比がつく)リード」を入れたい。ただし、命題1.12.9 の証明を少しだけ短くしないと、1行のスペースがないだろう。
- p275, 問題1.3.18(1) の答えの4行目 cx \in I^2 \cap J から c=0 を導くところで、演習問題1.3.17 を用いているが、命題1.3.42 の証明の最後の部分「I^2 の0 でない元の次数は2以上」、つまり対偶を取って「I^2 の1次以下の元は 0 のみ」を使っても示せる。
- p275, 問題1.4.2 の解答例。与えられた例に誤りはないものの、x 変数を導入する必要がない。A=\mathbb{C}[y]/(y^2), B=\mathbb{C} で、既に例になっている。この例ならば B は体なので、準同型 i :B\rightarrow A が単射であることは、系1.3.35で証明済みであるため、より平易な例と言える。しかも、この改変した例で挙げた A は dual number の環として\S1.5 で導入済みであり、そちらとの連関もとれる。(著者からのコメントあり)
「代数学1」
- 命題4.3.4(1) の証明の、「[G_i,G_i] \subset G_{i+1} から G_i/G_{i+1} が可換」を示しているところでは、命題4.3.2(2) の逆が使われている。命題 4.3.2(2) の主張を必要十分の形に書いておいた方が良い。
- # カンマの間の省略は \cdots ではなく \ldotsである。
ldots と cdots の区別の規則は 小田忠雄, p5, \S 1.5 の末尾を参照。と、以前書いたのだが、雪江さんのご指摘のように、これは英文での論文の慣習であり、和文に関してはまた別の規則があるらしいということを知りました。(2013.10加筆) 以下は、古いコメントです。
[この教科書の他の部分でも ldots で書くべきところが cdots となっているものがある。例えば、p2 line-2, p8 問題の1行目、p9 line -6, p13 line -6 and -5, p24 定義2.1.11 の2行目、定義2.1.11 の最後の行、p25 line 3, p27 line -3 and -1, p32 の命題2.3.13 の3行上の2つのcdots のうちの前のもの、p32 命題2.3.13 の証明(1) の1行目、2行目の最初のもの、p33 証明の(2) の2行目から3行目の3つ、p34 line -8 の2つのcdots のうちの前のもの、line -7 から line -4 で7つ、p34 定義2.3.22 の1行目の2つのcdots のうちの後ろのもの、2行目のひとつ、p35 line 1, p35 命題2.4.5 の証明の1行目、p36 例2.4.9(1) line 2, p38 例2.4.15(1), p42 例2.5.9 line 2, p44 命題2.5.12の証明の1行目の2つのcdots のうちの前のもの。他にもある。]
- # p26, 可換環、逆元、単元、乗法群は、「定義2.1.xx」と番号をつけて書いておきたい。(著者からのコメントあり。)
- p40, 命題2.4.19 の証明。原文の証明で正しいが、背理法を使わずに証明を書くことが可能である:第3文までは同じ。第4文の冒頭、「0\le i\lt j\le d-1 なら 0 \lt j-i \le d-1なので、x^{j-i}=1_G なら x の位数がd であることに矛盾する。」を「0 \le i\le j \le d-1 ならば 0 \le j-i \le d-1 なので、x の位数がd であることから、j-i=0 である。」に変更する。次の2つの文は削除して、「従って、1,x,\ldots, x^{d-1} は互いに相異なる元である。」に置き換える。
- p40, 命題2.4.19. なお、この命題の主張は d=\infty でも成立する。証明はじゃっかんの修正を要する。
- p44, 命題2.5.12の証明。原文で問題ないが、代案。H=\{ x \in G_1 \mid \phi_1(x) = \phi_2(x) \} とする。H は G_1 の部分群であり、S を含む。従って、命題2.3.13(2)より, \langle S \rangle =G_1 を含む。証明終わり。
- p57, 命題2.8.7. 原文で問題ないが、代案。x \in S に対して、K=\{ y \in N \mid xyx^{-1} \in N, x^{-1} y x \in N \} とする。K は N の部分群であり、T を含むので、命題2.3.13(2)より \langle T \rangle \subset K \subset N=\langle T \rangle. つまり、K=N. すなわち、xNx^{-1}=N.
次に H=\{ g \in G \mid gNg^{-1} = N \} とする。H は G の部分群であり、S を含むので、\langle S \rangle \subset H \subset G=\langle S \rangle. 従って、H=G, すなわち、gNg^{-1} \subset N がすべての g\in G に対して成り立つので N は正規部分群である。最終段落の4行は教科書通り。
コメント:なお、p94, 定義4.1.26の記号を使うと、H=\mbox{N}_G(N) 正規化群である。
- p69から70. 問題2.3.5 と 2.3.6 は対比しているので、途中で改ページ(特に奇数ページから偶数ページへ)しない方がいい。現状では面白さが半減している。p74に余白が数行あるので、適当にアレンジして、同じページになるようにしてほしい。(著者からのコメントあり。)付記:p74 の余白を利用した入れ替えだと、おっしゃる通り大掛かりな変更となるので、問題2.3.1から2.3.6 の中で適当に入れ替えるのはどうだろうか?行数の変更は生じないし、幸いなことに解答がついていないものばかりなので解答への影響もない。
- p71. 問題2.5.2. 第2文の内容は、問題文中ではなく、巻末の「演習問題の略解」のページで述べる内容と思われる。p143の「問題2.5.1 のヒント」、と併置すると効果的。(著者からのコメントあり。)
- p73, 演習問題2.8.1(4). 同一の問題を例4.2.5(p99)で(別のアプローチで)扱う予定であることに注意して演習で扱う。(学生が自由に先取り学習することは歓迎だが、教員がヒントを出す場合にどういう方針で行くかを考えておく。)
- # p110, line -5. 「取りかたの」は「取りかたに」。
- 定理4.7.1の証明の p115, line -7 の末尾からこのページの終わりまで。本では、「位数4の(可換)群の分類」を6行を要して解説しているが、それは4.8節の「有限アーベル群の基本定理」からすぐに従うことでもある。例えば、p151の問題4.7.5 でも「位数9の群の分類」の必要があり、ヒントの3行目ではその結果が直接書かれているが、おそらくp115にあるような個別計算ではなく、「有限アーベル群の基本定理」を使ったのではないかと推察される。その意味で問題4.7.5へ適用可能な汎用性のある議論が望ましく思える。もちろん位数4の場合の分類は「有限アーベル群の基本定理」の証明を理解せねばならぬほど大げさなことでないので、p115にあるような個別的議論が可能であることには意味があるだろう。ただし、それを、定理4.7.1 の証明の「途中」に置くべきか、独立に取り出してどこかで「事前」に扱うかは趣味が分かれる。付記:命題2.9.2 の適用例として、2.9節に入れておけるレベルの内容である、と、一度は書いたものの、再考してみると、2.9節の本文で必ずしもやっておくべき内容でもなかろう。2.9節の問題演習程度である。「もしも4.7節をするのならばやっておいた方がいい」というぐらいの扱いであろうから、本文で扱うとしたら、やはり、4.7節の中で、主定理の主張の前に準備として入れるぐらいしか、場所がないのかもしれない。それは美観を損ねるかもしれない。
- p116. 2行目から9行目「K が正規部分群でないとき H は正規部分群」という事実が証明されているが、この事実は以下の証明では使われていない。従って、次のように改変することが可能である。まず、p116の第2段落(つまり、4行目から9行目)を全部削除する。そして、10行目の「H,K のどちらかは正規部分群なので」を「H が正規部分群ならば」に置き換える。16行目の「場合2:H だけ正規部分群」を「場合2:K が正規部分群でないとき」に置き換える。(著者からのコメントあり。)
- 付記:「G=HK となるかどうかに興味がある」という理由が述べられているが、「G=HK」は、H やKが正規部分群であるかどうかの議論を経由しなくても証明可能な平易な内容である。証明:H\times K \rightarrow G を (h,k) \mapsto hk で定める。この写像は単射である。実際、もし、hk=h'k' ならば、(h')^{-1} h = k' k^{-1} \in H \cap K =\{ e\} だからである。位数が等しい集合の間の単射なので、全射となり、HK=G となった。証明終わり。コメント:結局、一般に、有限群 Gの部分群H, K に対して、「H の位数と K の位数が互いに素でその積がG の位数」という条件さえ満たしていれば、G=HK が得られる。これは、「G=HK であるかどうかの興味」に対する、一般的な解答(肯定的であるための簡便な十分条件)を与えている。もちろん、部分群が正規であることは不要である。
- 上記の項目に対する古いコメント:集合HK は、左K 剰余類の和集合なので、HK の元の個数は K の位数の倍数、すなわち3の倍数である。同じく、集合HK は、右H 剰余類の和集合なので、HK の元の個数は H の位数、すなわち、4 の倍数である。両者を合わせて、HK の元の個数は12 の倍数であり、G=HK が示せた。証明終わり。コメント:つまり、p116, line 10-12 の第2文以降の議論は、第1文の結論 「HK は部分群である」がなくても、この本の書き方そのままで通用している。(もちろん、部分群であるとあらかじめ分かっていれば、見通しはいいけれど。議論は同じ。)同じことは、例題4.5.8の解答の最後の4行についても言えて、HK が部分群であることがなくても、この本の書き方そのままで、HK=G が証明できている。
- p117, 場合3 の第1段落の line 5 からline 11. この内容は演習問題2.5.7 の答え(p144)と深く関連している。
- p117(a) の「\phi(H) = \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} なので、aba^{-1}=b^2」である。正しいが、詳細を書いておくと、「ab\neq ba なので、\phi(a) \neq id_K. したがって、\phi(a) = f. したがって、aba^{-1}= \phi(a)(b) =f(b)=b^2」
- p117(b) の「G は非可換なので、b \in H で bvb^{-1}=v^2 となるものがある。」正しいが、これを正当化するには、「b \in G でなく、b \in H に取れる」ことに気づく必要がある。ここの書き方の代案を書いておくと「\phi が全射なので b \in H で \phi(b) = f となるものがある。このとき、bvb^{-1} = \phi(b)(v) = f(v)=v^2 である。」
- # このように(a)(b) で議論に並行な部分があるのでなるべく同じ記号を使いたい。(著者からのコメントあり。)
- p117, line -2 から p118, line 14 までの議論の置き換え案。(p117, line -6 から line -3 の続きとして、)L=\langle b,v \rangle と定義する。L は位数2の元b と位数3の元v を含むので、L の位数は6の倍数。w \notin L なので L は G の真部分群なので、 L の位数は6である。w は b,v と可換なので、L と可換。従って、位数を考えて、G \cong L \times \langle w \rangle となる(命題2.9.2 が使える)。さて、Lは位数6の非可換群であるが、それは問題2.10.8(5)(p74)で分類されているので、L は S_3 と同型である。従って、G \cong \mathfrak{S}_3 \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} が得られた。なお、これは D_6 とも同型である。証明終わり。
コメント:教科書の証明も生成元と関係式を用いる練習として他の問題を解くときの参考にはなるものの、その点は場合(a) で既に扱われている課題である。また、上の解答では必要とならないので書いていないが、上の解答のw が G の中心になることが、上の解答の冒頭の段階で分かる。これは、分類を考える上で手がかりとなる情報である。
- p141, 問題1.2.2. 私には難しい問題だった。解答例の (a)(b)、あるいは (d)(e) に重複感がある。(この部分に関して著者からのコメントあり。)目先の変わった事例として、Vの双対線形空間、V 上の非退化対称双線形形式全体、 V の基底全体などを挙げたい感じ。ところで(代数学1の範囲を逸脱する質問だが)、もっと基本的な不変量である V の次元、V の係数体、というのは「関手」ではないのだろうか。
- p144, 問題2.5.7 の答えの1行目。写像 \bar{k} \mapsto \phi_{\bar{k}} は、群としての同型 (\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times \cong \mbox{Aut}(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}) を誘導している、と、まず言い切ってしまいたい。その上でさらに、群 (\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times の構造を(ヒント(c) の意味で)「決定」する作業に入る、という2段構えの議論になっていることを明示したい。後段では自己同型群を直接触っていない。なお、c.f., 系2.4.14.
- p144, 問題2.5.7(5). 結果の解釈:\S2.5 までの学習の範囲を超えるが、問題2.9.1(p73)で、群の同型 \mathbb{Z}/15\mathbb{Z} \cong \mathbb{Z}/3\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/5\mathbb{Z} を学習する。また、問題2.9.2(p73)により、群としての同型
\mbox{Aut}(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/5\mathbb{Z}) \cong \mbox{Aut}(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}) \times \mbox{Aut}(\mathbb{Z}/5\mathbb{Z}) が導かれる。そして、問題2.5.7(1) \mbox{Aut}(\mathbb{Z}/5\mathbb{Z}) \cong (\mathbb{Z}/5\mathbb{Z})^\times \cong \mathbb{Z}/4\mathbb{Z} や類似の議論によって \mbox{Aut}(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}) \cong (\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})^\times \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} である。
- p157 索引。線形写像は linear map だろう。linear transformation は線形変換V \rightarrow Vでは?。(著者からのコメントあり。)
- p21. (2.1.3) の次の行の行末の式(a^n)^{-1}= a^{-n}は、定義式 (2.1.3)の最後の式a^{-n}=(a^n)^{-1} とほぼ同一である。ただし、n<0 の場合に、逆元の逆元はもとの元(命題2.1.10(4))にあたることを書いていると解釈することもできる。それならば一応、同一ではないけど。しかし、示すべき式 (a^n)^{-1}= a^{-n}は (a^n)^{-1}=(a^{-1})^n に変更すると良いのではないかと思った。でももしかしたら、より一般化して、(a^m)^n=a^{mn} の方がいいのだろうか?(著者からのコメントあり。)
- 第1章、p... 集合の直積 \prod_{\mathbb{N}} {\mathbb{Q}} が空集合ではないところに選択公理が不要、という例について。ポイントは、(i) \mathbb{Q} が \lambda \in \mathbb{N} によらずに同一の集合である、というところ。この場合、有理数、自然数という具体的な集合の形は関係していない。(ii) また、例えば、群の直積は(異なる群の直積であったとしても)、各成分を成分ごとの単位元とする元が存在する(ので選択公理が不要だと思う)。ここの例はどちらの事例とも解釈できる。
「代数学1」著者自身の正誤表に反映されたコメント。
- # 例2.1.5. A^\times = A \setminus \{0\} と定義しているわけではない。page 26 の中程の定義と、例2.2.4 に注意。例えば、\mathbb{Z}\setminus \{0\} は \mathbb{Z}^\times ではないのだが、ここで挙げられている3つの例からは、そのように誤解する可能性がある。
- # 例2.2.4. M_n(\mathbb{R})^\times = GL_n(\mathbb{R}) は「n\geqq 2 のときに」非可換。(GL_1(\mathbb{R}) は可換。)
- # 命題2.3.2 の証明の前半。y=x^{-1} \in H は x^{-1}=y \in H と書きたい。
- # 命題2.3.2 の証明の後半「逆に」から。条件(2) が証明に現れない。「条件(2) より、群演算が H \times H \rightarrow H という写像を定める」ことに言及しておきたい。
- # p31. 例2.3.9. 実シンプレクティック群を表す記号としては Sp(2n) や Sp(n) ではなく、Sp(2n,\mathbb{R}) あるいは、Sp(n,\mathbb{R}) と書きたい。Sp(2n) は幾何などでは、compact 群を表す習慣である。また、代数群でも valued points 全体を書くときは \mathbb{R} をつけると思う。
- # p35, 2行目。本文のママで正しいが、何が省略されているかがより明示的になるように詳しく書くと、(\overbrace{1_{G_1},\ldots,1_{G_{j-1}}}^{j-1}, g_j,\overbrace{1_{G_{j+1}},\ldots,1_{G_t}}^{t-j}).
- # 命題2.4.18. 証明の1行目のH の定義。
n はこの命題の主張の中で固定されている数なので、H を定義するときの動く変数としては別の文字を使うべき。たとえば、H = \{ m \in \mathbb{Z} \mid x^m =1 \} とする。(著者からのコメントあり。)
付記:著者の言う通りである。H=\{ n \in \mathbb{Z} \mid x^n =1\} と定義したとき、H \subset d \mathbb{Z} が証明すべき事柄である。
- # 命題2.4.18. (1) \Rightarrow (2) の証明。原文の証明で正しいが、代案を書いてみる:H = \{ m \in \mathbb{Z} \mid x^m =1 \} とすると、H は \mathbb{Z} の部分群である。命題 2.4.17 より、整数 f \geqq 0 があり、H=f\mathbb{Z} となる。d \in H なので、「d は f の倍数である」。d>0 なので f\neq 0 すなわち f>0 である。位数の定義(d の最小性)より、「d \leqq f である」。以上の2つの「」をあわせて、f=d である。さて、仮定(1) より n \in H なので、n は f の倍数である。これは(2) を意味する。証明終わり。
コメント:ここで与えた証明は本質的にはこの本の証明と同じである。改変点は (i)「n=0 の場合のみなので」の議論の部分で d についての仮定を使っていることを明示してみた。(ii) 最後の2文を加えて、条件(2)との関係を明示した。(iii) H の定義の後で、H が部分群であることを述べた。
付記:コメント(ii) に関する証明の変更は、一つ前の項目の付記に鑑みれば、不要。
- # p39, 命題2.4.18. d の登場するところ「条件 d>0」は(位数と言った時点で)自動的に成り立っているので、書く必要はない。(改めて書かれてしまうと、何か含意があるのではないかと考えてしまう。)
- # p40, 命題2.4.19 の証明の2行目。カンマの間の省略は \cdots ではなく \ldotsである。
- # p40, 定義2.5.1(4). f は \phi.
- # p43, 例2.5.10の交代群。Ker(\sigma) は Ker(sgn).
- # 命題2.5.13の(1)\Rightarrow(2)の証明。証明の1行目の等号 1_{G_2} = \phi(1_{G_1}) のところでも、命題2.5.3(1) の1_{G_1} \in \mbox{Ker}(\phi) は使われているので、そのあとのタイミングで引用されると違和感あり。代案として、原文の順番を変更して、『命題2.5.3(1) より1_{G_1} \in \mbox{Ker}(\phi) である。逆に g \in \mbox{Ker}(\phi) ならば、\phi(g) = 1_{G_2} = \phi(1_{G_1}) なので、\phi が単射であれば、g=1_{G_1} である。』とすれば、あまり字数は変わらない。
- # p47, 命題2.5.24の証明。3行目。\phi(yx)=\phi(x)\phi(y) のところが気持ち悪い。丁寧に、
1_B = \phi(1_A) = \phi(xy) = \phi(x) \phi(y),
1_B = \phi(1_A) = \phi(yx) = \phi(y) \phi(x) と書いておきたい。
特に、3つ目の等号\phi(xy) = \phi(x) \phi(y)が、\phi が定める写像 A^\times \rightarrow B^\times が群の準同型であることを既に意味している。(証明を省略する必要がない。)
- # 例2.10.6. 2行目. \rightarrow は \mapsto.
- # p71. 問題 2.5.3(2) 条件を少し緩めて、\phi は単射でよい。
- # p71, 問題2.5.6 と p130, 問題4.1.7 は同一。(1)(2)(3)とも。ヒントもほとんど同じ。
- # p73, 演習問題2.9.4 ならびに 2.9.5。内容は 2.9節(直積)ではなく、2.8節(正規部分群)である。従って、2.8.4, 2.8.5という番号づけがなされるべきだし、2.8.3 のあとに置かれるべきものである。
- # p93, 命題4.1.23の3行目。仮定「\left|G\right|<\infty」は不要。なお、すぐ下のコメントを見よ。
- # p93, 命題4.1.23の証明の最後の行。\left| G/G_x \right| = \left| G \right| / \left| G_x \right| という等号まで書いてしまうと、G が有限群であるという仮定が必要になる。つまり命題の主張と証明されていることの間に、じゃっかんの差異がある。
- # p102. 例4.3.6. 2行目。指数 [G:N] はこの教科書の記号だと (G:N). しかし、そのように書く本もあると思うので、p52, 定義2.6.19 で「指数を(G:H) あるいは [G:H] と書く」ってしたら、やっぱり教科書としてはまずいのかな?
- # p104. 定義4.3.11. 岩波数学辞典第4版の項目468有限単純群では、素数位数の巡回群を単純群のリストに入れている。この教科書では、可換な場合を排除しているので、講義担当者として注意が必要。特に、命題4.3.12でぎょっとしないこと。(著者からのコメントあり。)
- # p107, 命題4.5.6 の2行目。\left| G \right| / \left| N_G(H) \right| は (G: N_G(H)) あるいは、\left| G/N_G(H) \right| に修正する必要あり。あるいは、命題にG が有限群であるという仮定をつければ成立するが、このページのline 4 から line 12 までの証明では有限群であるという仮定なしに議論できるような論理になっているので、命題でいきなり仮定をつけるのはあまり望ましいとは思えない。なお、p93, 命題4.1.23 へのコメントも参照。この辺りは、シローの定理以外への応用も視野に置いて丁寧な記述がされているので、そのラインでの一般性のある書き方を堅持しておきたい。
- # p108, 証明(4). 本文の証明で問題はないが、「H が G のシローp 部分群であれば、H は N_G(H) の唯一のシローp 部分群である」という内容が、p108, line -1 から p109, line 3 で証明されている。残念ながら、本文の記述だと背理法の中にあるため、その部分を抜粋することができないが、抜粋できるように証明を改変することが次のようにできる:最初の3文は教科書通り。第4文を、「H のこの作用による H_i の軌道が1つの元からなるならば、i=1 であることを示す。」に変更する(教科書の文章の対偶を書いたことになる。)そして、p109 の3行目の「これは矛盾なので、H_i の軌道は2つ以上の元よりなる。」を削除する。
- # この本の構成で 4.6, 4.7 節よりも後ろに 4.8 節の内容が書かれている理由は何だろうか?講義をするときは、4.5 節の後に4.8節を行い、その後、4.6, 4.7, 4.9 と続けて行っても支障ないと思われる。(著者の返答あり。)
- 定理4.7.1 へのコメント。位数が12のものの分類を考えるときには、すでに、位数が約数(4や6)の群の分類については分かっている、として話を進めるのが自然であろう、必ずしも使わないかもしれないけれど。関連して、位数 6,2 の群の直積で得られる \mathfrak{S}_3 \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} という位数12の群が定理のリストで欠落しているように一見思えるが、それは、2面体群 D_6 と同型なのである。
- # p116, line -9 の等式の順序。最初の2つの項を逆順にして、4=K の共役の数 =\cdots とすべき。4=[G: N_G(K_i)] という等号が直接書かれるのは、この内容からするとおかしい。
- # p118, line 4. 2面体群の生成元 r,t の取り方が、p88 命題4.1.10(1) と逆になっている(驚愕!)。同じ2文字をちょうど逆にとるのは、混乱を引き起こし、わかりづらい。統一するか、全く異なる文字を使うかをして欲しい。私の趣味としては、p118 の方の記号に合わせてほしいが、とりあえず、どちらかに統一してほしいというのが第1希望。
- # p118, line 6. 「a,b が D_6の生成元と同じ関係式を満たす。」この文の「同じ関係式」の意味が不明確である。この文章は「2面体群の生成元 r,t が満たす関係式すべてを a,b が満たす。」とも読めると思うのだが、そう読んでしまうと、G が D_6 の剰余群であることが直ちに従うため、以下の証明の必要性が理解できなくなる。 p118, line 8 の部分が必要となることからもわかるが、この段階では、2面体群の「全」関係式が命題4.1.10(1) のもので生成されることは、未証明である(p118, line 8-11 で証明される)。前置きが長くなったが、教科書の「D_6の生成元と同じ関係式」とは、直前の「r^6=t^2=1, trt^{-1} = r^{-1}」のことである。式に番号などを振ることで、指し示すものが何なのかを明示的にしたい。
- # p120, line 12「なので」から line 21「c\ge c-\ell+a_i である。」まで。場合分けや背理法など、論理が混み入っているが、次のように直線的に示せるところである。『となる。これより、p^{c+\ell-a_i} h = p^{c-a_i} p^\ell h=p^{c-a_i} p^\ell \beta m' h = p^{c-a_i} \beta m h = p^{c-a_i} \beta p^{a_i} g_i = \beta p^c g_i = \beta 0=0. したがって、h の位数が p^c であることより、c+\ell-a_i\ge c である。』
- # p131, 問題4.1.14(2). z \rightarrow gz は z \mapsto gz では?
- # p132, 問題4.2.2(2) S_5という記号が出てくる。一応、この本では(1) のように\mathfrak{S}_5 と書いている。
- # p133. 問題 4.2.6. \cdots の両側に2項演算子を配置して、\times \cdots \times のように書くとよい。2カ所。
- # p133. 問題4.2.6. 置換群の位数を n でなく、N としている理由は何か。同じ問題で正規部分群としてN が出てくるので、\mathfrak{S}_n の方がいいと思う。
- # p133, 問題4.3.1(2). 「[i,j] を求めよ」ではなく、いったん x,y を補助的に定義している理由は?
- # p135, 問題4.5.8. 命題4.1.23から直ちに従うため、この場所ではなく4.1節に置くべき問題。もしかしたら、この問題ではなくて、別の問題がここに入るのでは?と疑われる。
- # p135. 問題4.5.6(2) \mathbb{Z}/15\mathbb{Z} は\mathbb{Z}/30\mathbb{Z}。
- # p137, 問題4.8.2 と 4.8.3. この節(有限アーベル群)の内容とかけ離れているので、別の節に置くべき。おそらく、4.6 節。
- # p137. 4.8.2(2). 「のの」は「の」。
- # p138. 4.8.3. 「したがって」。前文の証明で要求している命題の成否に係わらず、\phi は内部自己同型ではない。(定理4.2.3 より)
- # p141, 1.1.11(5) の答え。ここのレッスンの内容(目的)から考えると、\delta の後ろの「カンマ」は「かつ」と明示的に書いておいた方がよかろう。
- # p145. 解答 2.9.5. すべての部分群が正規部分群。たとえば、\langle i \rangle は指数2。
- # p146, 4.1.6の答え。(2) は解答例と言えよう。(「答え」「解答例」の説明文はp140にあり。)
- # p146, 4.1.9(2). 成分表示 [y_1,y_2] は使っていないので不要。
- # p147. 4.2.2(2) の答え。後半の設問に対する答えが書いてない。(すべての問題の答えを載せているのではないので、書いてなくてもいいけど。前半の設問に対する答えは書いてある。)
- # p147. 4.2.4(1) の答え。(34)も入ると思うのだが?
- 問題2.5.9を扱う際に問題4.2.8 と関連しているという視点を盛り込むかどうか。(演習をする上での注意点。)
- # p151, 4.7.1 のヒント。「3」は「p」。
- # p155 索引。外部自己同型。outer automorphism が普通だと思われる。
- # p155 索引。共役類。conjugacy class が普通だと思われる。
- # p156 索引。四元数。quarternion は quaternion。MathSci で検索してみると面白い。
「代数学2」著者自身の正誤表に反映されたコメント。
- # p4, line 3. 「\mathbb{C} 上の2次元のベクトル空間である。」書かれていることは間違ってはいない。ただし、\mathbb{H} を\mathbb{C} を用いて複素線形空間と見なすやり方は、左線形空間と右線形空間と2通りの方法がある。複素線形空間としての構造として自然なものがひとつ定まるかのような誤解があり得る(教科書にはもちろんそうは書いてないが、)ので、念のためコメントしておく。
- # p25, 定義 1.4.2 の直後。極大イデアルの定義は、後に p33 で登場する。
- # p47, line -6. どこかに V(I) = \{ a \in \mathbb{C}^n \mid h(a)=0, \forall h \in I \} と明示的に書いておきたい。ここでは、I=(f_1(x),\ldots, f_m(x)) のとき、V(I)=\{ a \in \mathbb{C}^n \mid f_1(a)=\cdots=f_m(a)=0 \} を示したことになる。
- # p58, 命題 1.11.12 の証明。帰納法はおそらく n に関する帰納法。おそらく m \ge n を仮定している。(そう仮定しなくても帰納法は進行できるが、その場合、証明の4行目の「元である」のところで、「元であり、特に m\ge 1 である」と書いておきたい。)また、帰納法の初期ステップ n=1 (あるいは、n=0)のときの記述が implicit である。
- # p59, 命題1.11.15 の1行目、p_1,\ldots, p_n は「互いに素な」素元。
- # p59. 命題1.11.15, line 3. p_1^{\beta_1}の後ろのカンマを取る(2カ所)。
- # p63, l2. 「以下、この節の終わりまで、A を一意分解環とする」とあるが、例1.11.41 ではA=\mathbb{Z}[\sqrt{-5}] が一意分解環でないことを証明しているので、つごうが悪い。一番いいのは、p66, line 7 から新しい節にしてしまうことであるが、これは目次や演習問題の番号なども変更する必要があり、改訂版では対応しきれないであろう。実際は、「p66, line 6 までは、A を一意分解環とする」とするのが現実的な対応。
- # p63, 補題1.11.31の冒頭。f(x) \neq 0 としておいた方がよい。
- # p66, 証明の line 9. p_N^{a_N} は p_i^{a_i}.
- # p77, 問題1.3.1(2). +\cdots+ のように前後に2項演算子を配置したい。
- # p79, 問題1.6.2. \mathfrak{m}_2 は極大イデアルではないので、\mathfrak{m} という記号に違和感あり。
- # p81, 問題1.9.1. \rightarrow は \mapsto. 3カ所。
- # p147, 例2.13.12 のweb にあるコメント『命題2.10.7 の無限直和の場合を使う(演習問題2.10.6).
ほとんど命題2.10.7と同じようにできるのだが、これを使わないとR[x,y]\otimes_RC \cong C[x,y] が正確にはいえない』と書かれているが、そうだろうか?テンソル積の普遍性の誘導するR線形写像
R[x,y]\otimes_RC \ni f(x,y) \otimes c \mapsto c f(x,y) \in C[x,y] が全単射であることを言いたいだろうが、命題2.10.7 でA=R, M=R[x,y], N_1\oplus N_2=C とすると
R[x,y] \otimes_RC \cong R[x,y] \otimes_RR \oplus R[x,y] \otimes_RR\sqrt{-1}
= C[x,y] となることがわかる。
- # p264. 補題4.17.3 の証明。ここでは \exp という超越関数が使われているが、それを避ける別証明がある。別証明:「任意の正の実数の平方根が存在する」ということを使えば、ここで証明したい「任意の複素数の平方根が存在する」ことが証明できる。実際、a=u+v\sqrt{-1} と(u,vは実数)としたとき、x=\sqrt{(u+\sqrt{u^2+v^2})/2}, y=v/(2x) と定めれば、(x+y\sqrt{-1})^2=a となる。証明終わり。コメント:なお、ここで用いた「任意の正の実数の平方根が存在する」は、関数x^2 の連続性と中間値の定理を使って証明されるので、(補題4.17.2 の上の行にあるように)この補題は「解析的な考察」の一環であるといってよかろう。別証明のポイントは、「複素で平方根」と「正の実数で平方根」の間は、四則演算でつなげられるということ。
- # p273, 1.2.4 の「解答例」は「答え」。
- # p273, 1.2.5 の解答例。例えば n=2 のとき、
I の2つの元 p,q に対して、
写像 \phi_1, \phi_2 : \{ 1,2 \} \rightarrow I を
\phi_1(1)=p, \phi_1(2)=q,
\phi_2(1)=q, \phi_2(2)=p と定める。
a_1(1,0) = 5, a_2(0,1)=5 と定め、a_1, a_2 のその他の値は0 と定める。
(a_1,\phi_1), (a_2,\phi_2) \in X_2 は異なる元であるが、
(a_1, \phi_1) および (a_2, \phi_2) の定める多項式はどちらも
5 x_p であると考えたい。従って、X_2 に何らかの同一視(同値関係)を導入してそれで割る操作が必要になると考えられる。この改善の必要性は、無限変数になる前の2変数多項式環のレベルで既に生じている。
- # p274, 1.3.9 のヒント。ad-bc=0 の時は、
単射でないことを示す、という方針はどうだろうか。
実際、
\alpha x + \beta y の像が零になるような(\alpha,\beta) \neq (0,0) の存在を
証明することができる。そして、その解法だと、条件
ad-bc\neq 0 が関係してくる理由も納得しやすい。
- # p295. 索引に I(X), p20, V(I), p47 がないのは寂しい。
- # p295, 索引の記号表に \mathfrak{m}_a, p20, p51 がない。
- # p300, 索引に「普遍性」がない。p40, 102, 127. p25 も言葉は出て来ないが、内容的には普遍性にふさわしい。