数学基礎Iの中間試験の問題から。講義で学習したものとは異なった解き方かもしれません。要素を取る議論は基本中の基本ではありますが、やや面倒なので、集合の間の等式や包含関係で回避できる時は、要素を取らずに答案を書くと言う手もあります。
- $\displaystyle\bigcap_{n=1}^\infty[-\infty,1/n] =(-\infty,0]$ を示せ。
- 補集合を考えると、$\cup (1/n,\infty) =(0,\infty)$ を示せば良い。$(1/n,\infty) \subset (0,\infty)$ であるから、$n$ に関する和集合を考えて、$\cup (1/n,\infty) \subset (0,\infty)$ は OK。したがって、逆向きの包含関係 $\cup (1/n,\infty) \supset (0,\infty)$ を示せば良い。要素をとって言い換える。$\forall x \in (0,\infty)$ に対して、$x \in \cup (1/n,\infty)$ を示せば良い。すなわち、$\forall x\gt 0$ に対して、ある自然数 $n$ が存在して、$x\gt 1/n$ が成り立っていれば良い。与えられた $x$に対して、$n\gt 1/x$ となるような自然数 $n$ が存在するからOK。
- $\displaystyle\bigcap_{n=1}^\infty[0,1/n] =\{0\}$ を示せ。
- $A_n = [0,1/n]$ とする。$\cap A_n = \{0\}$ を示したい。
$B_n=(-\infty,1/n], C=[0,\infty)$ とする。$A_n=B_n \cap C$ である。ゆえに $\cap A_n = \cap (B_n \cap C) = (\cap B_n) \cap C = (-\infty,0] \cap [0,\infty)= \{0\}$ である。ただし、3つ目の等号では一つ上で示した事実 $\cap B_n = (-\infty,0]$ を用いた。証明終わり。
- $\displaystyle \bigcup_{n=1}^\infty (1,2+1/n) = (1,3]$ を示せ。
- $A_n=(1,2+1/n)$ とする。$A_n \subset A_1$ ゆえ、$n$ に関する和集合を考えて $\cup A_n \subset A_1$. 一方、$A_1 \subset \cup A_n$である。したがって、$\cup A_n = A_1$.
証明終わり。
- $B_n = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid -1/n \leq x \leq 1+1/n, -1/n \leq y \leq 1/n \}$ とする。$\displaystyle \bigcap_{n=1}^\infty B_n = \{ (x,0) \mid 0 \leq x \leq 1\}$ であることを示せ。
- 長方形の4辺を用いて $C_n = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid x \geq -1/n \}$,
$D_n = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid x \leq 1+1/n \}$,
$E_n = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid y \geq -1/n \}$,
$F_n = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid y \leq 1/n \}$
と定義すると、$B_n = C_n \cap D_n \cap E_n \cap F_n$ である。
したがって、$\cap B_n = \cap (C_n \cap D_n \cap E_n \cap F_n)
= (\cap C_n) \cap (\cap D_n) \cap (\cap E_n) \cap (\cap F_n)$ である。
$\cap C_n = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid x \leq 1\}$,
$\cap E_n = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid y \leq 0\}$,
$\cap D_n = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid x \geq 0\}$,
$\cap F_n = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid y \geq 0\}$
を示せば良い。
これらの等式の証明は1つ次元の低い
$\cap (-\infty, 1+1/n] =(-\infty,1]$,
$\cap (-\infty,1/n] = (-\infty,0]$,
$\cap [-1/n,\infty) = [0,\infty)$
に帰着されている。
これらは第1項目の等式を平行移動したり $-1$ 倍して反転した式である。
陰関数の定理(定理9.1)が1次式の場合にどうなるか。
- 「$F: \mathbb{R}^2\to\mathbb{R}$, $F(a,b)=0$, $F_y(a,b)\neq 0$ ならば、次の条件を満たすような $\varphi(x)$ が一意的に存在する: $F(x,\varphi(x))=0$, $\varphi'(x) = - F_x(x,\varphi(x))/F_y(x,\varphi(x))$.」
- $F(x,y) = c x+dy+e$ の場合にこの定理がどうなっているかを見る。まず、$F(a,b)=0$ なので $e=-ca-db$ である。これを代入して、$F(x,y)=c(x-a)+d(y-b)$ である。この時、$F_y=d$ なので仮定は $d \neq 0$ となる。$F(x,y)=0$ を $y$ について解くと $y=b-\dfrac{d}{c} (x-a)$ となる。従って、$y' = -\frac{d}{c}$ となる。$F_y=d$, $F_x=c$ であるから、これは、要望していた $\varphi'(x) = - F_x(x,\varphi(x))/F_y(x,\varphi(x))$ と合致している。