雪江明彦「代数学1」日本評論社
- 講義をした上で気がついた点。
- なお、著者自身の正誤表のページあり。
そこに反映されているものは # と書きます。
- # 例2.1.5. $A^\times = A \setminus \{0\}$ と定義しているわけではない。page 26 の中程の定義と、例2.2.4 に注意。例えば、$\mathbb{Z}\setminus \{0\}$ は $\mathbb{Z}^\times$ ではないのだが、ここで挙げられている3つの例からは、そのように誤解する可能性がある。
- # 例2.2.4. $M_n(\mathbb{R})^\times = GL_n(\mathbb{R})$ は「$n\geqq 2$ のときに」非可換。($GL_1(\mathbb{R})$ は可換。)
- # 命題2.3.2 の証明の前半。$y=x^{-1} \in H$ は $x^{-1}=y \in H$ と書きたい。
- 命題2.3.2 の証明の後半「逆に」から。条件(2) が証明に現れない。「条件(2) より、群演算が $H \times H \rightarrow H$ という写像を定める」ことに言及しておきたい。
- p31. 例2.3.9. 実シンプレクティック群を表す記号としては Sp$(2n)$ や Sp$(n)$ ではなく、Sp$(2n,\mathbb{R})$ あるいは、Sp$(n,\mathbb{R})$ と書きたい。Sp$(2n)$ は幾何などでは、compact 群を表す習慣である。また、代数群でも valued points 全体を書くときは $\mathbb{R}$ をつけると思う。
- p35, 2行目。本文のママで正しいが、何が省略されているかがより明示的になるように詳しく書くと、$(\overbrace{1_{G_1},\ldots,1_{G_{j-1}}}^{j-1}, g_j,\overbrace{1_{G_{j+1}},\ldots,1_{G_t}}^{t-j})$.
- # p39, 命題2.4.18. $d$ の登場するところ「条件 $d>0$」は(位数と言った時点で)自動的に成り立っているので、書く必要はない。(改めて書かれてしまうと、何か含意があるのではないかと考えてしまう。)
- 命題2.4.18. 証明の1行目の$H$ の定義。
$n$ はこの命題の主張の中で固定されている数なので、$H$ を定義するときの動く変数としては別の文字を使うべき。たとえば、$H = \{ m \in \mathbb{Z} \mid x^m =1 \}$ とする。
- 命題2.4.18. (1) $\Rightarrow$ (2) の証明。教科書の証明で正しいが、代案を書いてみる:$H = \{ m \in \mathbb{Z} \mid x^m =1 \}$ とすると、$H$ は $\mathbb{Z}$ の部分群である。命題 2.4.17 より、整数 $f \geqq 0$ があり、$H=f\mathbb{Z}$ となる。$d \in H$ なので、「$d$ は $f$ の倍数である」。$d>0$ なので $f\neq 0$ すなわち $f>0$ である。位数の定義($d$ の最小性)より、「$d \leqq f$ である」。以上の2つの「」をあわせて、$f=d$ である。さて、仮定(1) より $n \in H$ なので、$n$ は $f$ の倍数である。これは(2) を意味する。証明終わり。
コメント:ここで与えた証明は本質的にはこの本の証明と同じである。改変点は (i)「$n=0$ の場合のみなので」の議論の部分で $d$ についての仮定を使っていることを明示してみた。(ii) 最後の2文を加えて、条件(2)との関係を明示した。(iii) $H$ の定義の後で、$H$ が部分群であることを述べた。
- p40, 命題4.2.19 の証明。原文でいいのだが、背理法を使わずに証明を書くことが可能である:第3文までは同じ。第4文の冒頭、「$0\le i<j\le d-1$ なら $0<j-i \le d-1$なので、$x^{j-i}=1_G$ なら $x$ の位数が$d$ であることに矛盾する。」を「$0 \le i\le j \le d-1$ ならば $0 \le j-i \le d-1$ なので、$x$ の位数が$d$ であることから、$j-i=0$ である。」に変更する。次の2つの文は削除して、「従って、$1,x,\ldots, x^{d-1}$ は互いに相異なる元である。」に置き換える。
- p40, 命題4.2.19 の証明の2行目。カンマの間の省略は $\cdots$ ではなく $\ldots$である。この教科書の他の部分でもそのような記法があると思われる。規則は 小田忠雄, p5, \S 1.5 の末尾を参照。なお、TeX だと、$\backslash$dots と書けば、自動判定してくれる。
- p40, 命題4.2.19. なお、この命題の主張は $d=\infty$ でも成立する。証明はじゃっかんの修正を要する。
- p40, 定義2.5.1(4). $f$ は $\phi$.
- p43, 例2.5.10の交代群。Ker($\sigma$) は Ker(sgn).
- p44, 命題2.5.12の証明。原文で問題ないが、代案。$H=\{ x \in G_1 \mid \phi_1(x) = \phi_2(x) \}$ とする。$H$ は $G$ の部分群であり、$S$ を含む。従って、命題2.3.13(2)より, $\langle S \rangle =G$ を含む。証明終わり。
- 命題2.5.13の(1)$\Rightarrow$(2)の証明。証明の1行目の等号 $1_{G_2} = \phi(1_{G_1})$ のところでも、命題2.5.3(1) の$1_{G_1} \in \mbox{Ker}(\phi)$ は使われているので、そのあとのタイミングで引用されると違和感あり。代案として、原文の順番を変更して、『命題2.5.3(1) より$1_{G_1} \in \mbox{Ker}(\phi)$ である。逆に $g \in \mbox{Ker}(\phi)$ ならば、$\phi(g) = 1_{G_2} = \phi(1_{G_1})$ なので、$\phi$ が単射であれば、$g=1_{G_1}$ である。』とすれば、あまり字数は変わらない。
- p47, 命題2.5.24の証明。3行目。$\phi(yx)=\phi(x)\phi(y)$ のところが気持ち悪い。丁寧に、
$1_B = \phi(1_A) = \phi(xy) = \phi(x) \phi(y)$,
$1_B = \phi(1_A) = \phi(yx) = \phi(y) \phi(x)$ と書いておきたい。
特に、3つ目の等号$\phi(xy) = \phi(x) \phi(y)$が、$\phi$ が定める写像 $A^\times \rightarrow B^\times$ が群の準同型であることを既に意味している。(証明を省略する必要がない。)
- p57, 命題2.8.7. 原文で問題ないが、代案。$x \in S$ に対して、$K=\{ y \in N \mid xyx^{-1} \in N, x^{-1} y x \in N \}$ とする。$K$ は $N$ の部分群であり、$T$ を含むので、命題2.3.13(2)より $\langle T \rangle \subset K \subset N=\langle T \rangle$. つまり、$K=N$. すなわち、$xNx^{-1}=N$.
次に $H=\{ g \in G \mid gNg^{-1} = N \}$ とする。$H$ は $G$ の部分群であり、$S$ を含むので、$\langle S \rangle \subset H \subset G=\langle S \rangle$. 従って、$H=G$, すなわち、$gNg^{-1} \subset N$ がすべての $g\in G$ に対して成り立つので $N$ は正規部分群である。最終段落の4行は教科書通り。
コメント:なお、p94, 定義4.1.26の記号を使うと、$H=\mbox{N}_G(N)$ 正規化群である。
- # 例2.10.6. 2行目. $\rightarrow$ は $\mapsto$.
- p69から70. 問題2.3.5 と 2.3.6 は対比しているので、途中で改ページ(特に奇数ページから偶数ページへ)すると、面白さが半減する。p74に余白が数行あるので、適当にアレンジして、同じページになるようにしてほしい。
- p71. 問題2.5.2. 第2文の内容は、問題文中ではなく、巻末の「演習問題の略解」のページで述べる内容と思われる。p143の「問題2.5.1 のヒント」、と併置すると効果的。
- # p71. 問題 2.5.3(2) 条件を少し緩めて、$\phi$ は単射でよい。
- p71, 問題2.5.6 と p130, 問題4.1.7 は同一。(1)(2)(3)とも。ヒントもほとんど同じ。
- p73, 演習問題2.8.1(4). 同一の問題を例4.2.5(p99)で(別のアプローチで)扱う予定であることに注意して演習で扱う。(学生が自由に先取り学習することは歓迎だが、教員からヒントを出す場合にどういう方針で行くかを考えておく。)
- p73, 演習問題2.9.4 ならびに 2.9.5。内容は 2.9節(直積)ではなく、2.8節(正規部分群)である。従って、2.8.4, 2.8.5という番号づけがなされるべきだし、2.8.3 のあとに置かれるべきものである。
- p102. 例4.3.6. 2行目。指数 $[G:N]$ はこの教科書の記号だと $(G:N)$. しかし、そのように書く本もあると思うので、p52, 定義2.6.19 で「指数を$(G:H)$ あるいは $[G:H]$ と書く」ってしたら、やっぱり教科書としてはまずいのかな?
- p104. 定義4.3.11. 岩波数学辞典第4版の項目468有限単純群では、素数位数の巡回群を単純群のリストに入れている。この教科書では、可換な場合を排除しているので、講義担当者として注意が必要。特に、命題4.3.12でぎょっとしないこと。
- p108, 証明(4). 本文の証明で問題はないが、「$H$ が $G$ のシロー$p$ 部分群であれば、$H$ は N$_G(H)$ の唯一のシロー$p$ 部分群である」という内容が、p108, line -1 から p109, line 3 で証明されている。残念ながら、本文の記述だと背理法の中にあるため、その部分を抜粋することができないが、抜粋できるように証明を改変することが次のようにできる:最初の3文は教科書通り。第4文を、「$H$ のこの作用による $H_i$ の軌道が1つの元からなるならば、$i=1$ であることを示す。」に変更する(教科書の文章の対偶を書いたことになる。)そして、p109 の3行目の「これは矛盾なので、$H_i$ の軌道は2つ以上の元よりなる。」を削除する。
- 定理4.7.1の証明の p115, line -7 の末尾からこのページの終わりまで。ここでは、「位数4の可換群の分類」を6行を要して解説しているが、次節の「有限アーベル群の基本定理」からすぐに従うことでもある。例えば、p151の問題4.7.5 のヒントの3行目では、おそらくp115にあるような個別計算ではなく、「有限アーベル群の基本定理」を使ったのではないかと推察される。もちろん位数4の場合の分類は「有限アーベル群の基本定理」の証明を理解せねばならぬほど大げさなことでないので、p115にあるような個別的議論が可能であることには意味があるだろう。ただし、それを、定理4.7.1 の証明の中に置くべきか、独立に取り出してどこかで事前に扱うかは趣味が分かれる。実際は、位数が12のものの分類を考えるときには、すでに、位数が約数(4や6)の群の分類については分かっている、として話を進めるのが自然であろう、必ずしも使わないかもしれないけれど。
- この本の構成で 4.6, 4.7 節よりも後ろに 4.8 節の内容が書かれている理由は何だろうか?講義をするときは、4.5 節の後に4.8節を行い、その後、4.6, 4.7, 4.9 と続けて行っても支障ないと思われる。
- p116. 2行目から9行目「$K$ が正規部分群でないとき $H$ は正規部分群」という事実が証明されているが、この事実は以下の証明では使われていない。従って、次のように改変することが可能である。まず、p116の第2段落(つまり、4行目から9行目)を全部削除する。そして、10行目の「$H,K$ のどちらかは正規部分群なので」を「$H$ が正規部分群ならば」に置き換える。16行目の「場合2:$H$ だけ正規部分群」を「場合2:$K$ が正規部分群でないとき」に置き換える。
- p116, line -9 の等式の順序。最初の2つの項を逆順にして、$4=K$ の共役の数 $=\cdots$ とすべき。$4=[G: N_G(K_i)]$ という等号が直接書かれるのは、この内容からするとおかしい。
- p117, 場合3 の第1段落の line 5 からline 11. この内容は演習問題2.5.7 の答え(p144)と深く関連している。
- p117(a) の「$\phi(H) = \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ なので、$aba^{-1}=b^2$」である。正しいが、詳細を書いておくと、「$ab\neq ba$ なので、$\phi(a) \neq$ id$_K$. したがって、$\phi(a) = f$. したがって、$aba^{-1}= \phi(a)(b) =f(b)=b^2$」
- p117(b) の「$G$ は非可換なので、$b \in H$ で $bvb^{-1}=v^2$ となるものがある。」正しいが、「$b \in G$ でなく、$b \in H$ に取れる」ことに気づく必要がある。代案を書いておくと「$\phi$ が全射なので $b \in H$ で $\phi(b) = f$ となるものがある。このとき、$bvb^{-1} = \phi(b)(v) = f(v)=v^2$ である。」
なお、このように見ると、場合(a)と場合(b)で同じ議論をしているので、なるべくなら似通った記号を使いたいところである。
- p118, line 4. 2面体群の生成元 $r,t$ の取り方が、p88 命題4.1.10(1) と逆になっている(驚愕!)。同じ2文字をちょうど逆にとるのは、混乱を引き起こし、わかりづらい。統一するか、全く異なる文字を使うかをして欲しい。私の趣味としては、p118 の方の記号に合わせてほしいが、とりあえず、どちらかに統一してほしいというのが第1希望。
- p118, line 6. 「$a,b$ が $D_6$の生成元と同じ関係式を満たす。」この文の「同じ関係式」の意味が不明確である。この文章は「2面体群の生成元 $r,t$ が満たす関係式すべてを $a,b$ が満たす。」とも読めると思うのだが、そう読んでしまうと、$G$ が $D_6$ の剰余群であることが直ちに従うため、以下の証明の必要性が理解できなくなる。 p118, line 8 の部分が必要となることからもわかるが、この段階では、2面体群の「全」関係式が命題4.1.10(1) のもので生成されることは、未証明である(p118, line 8-11 で証明される)。前置きが長くなったが、教科書の「$D_6$の生成元と同じ関係式」とは、直前の「$r^6=t^2=1, trt^{-1} = r^{-1}$」のことである。式に番号などを振ることで、指し示すものが何なのかを明示的にしたい。
- p132, 問題4.2.2(2) $S_5$という記号が出てくる。一応、この本では(1) のように$\mathfrak{S}_5$ と書いている。
- # p133. 問題 4.2.6. $\cdots$ の両側に2項演算子を配置して、$\times \cdots \times$ のように書くとよい。2カ所。
- p133. 問題4.2.6. 置換群の位数を $n$ でなく、$N$ としている理由は何か。同じ問題で正規部分群として$N$ が出てくるので、$\mathfrak{S}_n$ の方がいいと思う。
- p133, 問題4.3.1(2). 「$[i,j]$ を求めよ」ではなく、いったん $x,y$ を補助的に定義している理由は?
- p135. 問題4.5.6(2) $\mathbb{Z}/15\mathbb{Z}$ は$\mathbb{Z}/30\mathbb{Z}$。
- p137. 4.8.2(2). 「のの」は「の」。
- p138. 4.8.3. 「したがって」。前文の証明で要求している命題の成否に係わらず、$\phi$ は内部自己同型ではない。(定理4.2.3 より)
- p141, 1.1.11(5) の答え。ここのレッスンの内容(目的)から考えると、$\delta$ の後ろの「カンマ」は「かつ」と明示的に書いておいた方がよかろう。
- p141, 問題1.2.2. 私には難しい問題だった。解答例の (a)(b)、あるいは (d)(e) に重複感があるので、$V$の双対線形空間、$V$ 上の非退化対称双線形形式全体、 $V$ の基底全体などを挙げたい感じ。ところで、もっと基本的な不変量である $V$ の次元、$V$ の係数体、というのは関手ではないのだろうか。
- p144, 問題2.5.7 の答えの1行目。写像 $\bar{k} \mapsto \phi_{\bar{k}}$ は、群としての同型 $(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times \cong \mbox{Aut}(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})$ を誘導している、と、まず言い切ってしまいたい。その上でさらに、群 $(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times$ の構造をヒント(c) の意味で「決定」する作業に入っている。(c.f., 系2.4.14.)
- p144, 問題2.5.7(5). 結果の解釈:\S2.5 までの学習の範囲を超えるが、問題2.9.1(p73)で、群の同型 $\mathbb{Z}/15\mathbb{Z} \cong \mathbb{Z}/3\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/5\mathbb{Z}$ を学習する。また、問題2.9.2(p73)により、群としての同型
$\mbox{Aut}(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/5\mathbb{Z}) \cong \mbox{Aut}(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}) \times \mbox{Aut}(\mathbb{Z}/5\mathbb{Z})$ が導かれる。そして、問題2.5.7(1) $\mbox{Aut}(\mathbb{Z}/5\mathbb{Z}) \cong (\mathbb{Z}/5\mathbb{Z})^\times \cong \mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ や類似の議論によって $\mbox{Aut}(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}) \cong (\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})^\times \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ である。
- # p145. 解答 2.9.5. すべての部分群が正規部分群。たとえば、$\langle i \rangle$ は指数2。
- p146, 4.1.6の答え。(2) は解答例と言えよう。(「答え」「解答例」の説明文はp140にあり。)
- p146, 4.1.9(2). 成分表示 $[y_1,y_2]$ は使っていないので不要。
- p147. 4.2.2(2) の答え。後半の設問に対する答えが書いてない。(すべての問題の答えを載せているのではないので、書いてなくてもいいけど。前半の設問に対する答えは書いてある。)
- p147. 4.2.4(1) の答え。$(34)$も入ると思うのだが?
- 問題2.5.9を扱う際に問題4.2.8 と関連しているという視点を盛り込むかどうか。(演習をする上での注意点。)
- p151, 4.7.1 のヒント。「3」は「p」。
- p155 索引。外部自己同型。outer automorphism が普通だと思われる。
- p155 索引。共役類。conjugacy class が普通だと思われる。
- p156 索引。四元数。quarternion は quaternion。
- p157 索引。線形写像は linear map だろう。linear transformation は線形変換$V \rightarrow V$では?。
- p21. (2.1.3) の次の行の行末の式$(a^n)^{-1}= a^{-n}$は、定義式 (2.1.3)の最後の式$a^{-n}=(a^n)^{-1}$ とほぼ同一である。ただし、$n<0$ の場合に、逆元の逆元はもとの元(命題2.1.10(4))にあたることを書いていると解釈することもできる。それならば一応、同一ではないけど。しかし、示すべき式 $(a^n)^{-1}= a^{-n}$は $(a^n)^{-1}=(a^{-1})^n$ に変更すると良いのではないかと思った。でももしかしたら、より一般化して、$(a^m)^n=a^{mn}$ の方がいいのだろうか?
- 第1章、p... 集合の直積 $\prod_{\mathbb{N}} {\mathbb{Q}}$ が空集合ではないところに選択公理が不要、という例について。ポイントは、(i) $\mathbb{Q}$ が $\lambda \in \mathbb{N}$ によらずに同一の集合である、というところ。この場合、有理数、自然数という具体的な集合の形は関係していない。(ii) また、例えば、群の直積は(異なる群の直積であったとしても)、各成分を成分ごとの単位元とする元が存在する(ので選択公理が不要だと思う)。ここの例はどちらの事例とも解釈できる。
「代数学2」
- # p25, 定義 1.4.2 の直後。極大イデアルの定義は、後に p33 で登場する。
- # p58, 命題 1.11.12 の証明。帰納法はおそらく $n$ に関する帰納法。おそらく $m \ge n$ を仮定している。(そう仮定しなくても帰納法は進行できるが、その場合、証明の4行目の「元である」のところで、「元であり、特に $m\ge 1$ である」と書いておきたい。)また、帰納法の初期ステップ $n=1$ (あるいは、$n=0$)のときの記述が implicit である。
- # p63, l2. 「以下、この節の終わりまで、$A$ を一意分解環とする」とあるが、例1.11.41 では$A=\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ が一意分解環でないことを証明しているので、つごうが悪い。一番いいのは、p66, line 7 から新しい節にしてしまうことであるが、これは目次や演習問題の番号なども変更する必要があり、改訂版では対応しきれないであろう。実際は、「p66, line 6 までは、$A$ を一意分解環とする」とするのが現実的な対応。
- # p63, 補題1.11.31の冒頭。$f(x) \neq 0$ としておいた方がよい。
- # p77, 問題1.3.1(2). $+\cdots+$ のように前後に2項演算子を配置したい。
- # p79, 問題1.6.2. $\mathfrak{m}_2$ は極大イデアルではないので、$\mathfrak{m}$ という記号に違和感あり。
- # p81, 問題1.9.1. $\rightarrow$ は $\mapsto$. 3カ所。
- # p147, 例2.13.12 のweb にあるコメント『命題2.10.7 の無限直和の場合を使う(演習問題2.10.6).
ほとんど命題2.10.7と同じようにできるのだが、これを使わないと$R[x,y]\otimes_RC \cong C[x,y]$ が正確にはいえない』と書かれているが、そうだろうか?テンソル積の普遍性の誘導するR線形写像
$R[x,y]\otimes_RC \ni f(x,y) \otimes c \mapsto c f(x,y) \in C[x,y]$ が全単射であることを言いたいだろうが、命題2.10.7 で$A=R$, $M=R[x,y]$, $N_1\oplus N_2=C$ とすると
$R[x,y] \otimes_RC \cong R[x,y] \otimes_RR \oplus R[x,y] \otimes_RR\sqrt{-1}
= C[x,y]$ となることがわかる。
- # p264. 補題4.17.3 の証明。ここでは $\exp$ という超越関数が使われているが、それを避ける別証明がある。別証明:「任意の正の実数の平方根が存在する」ということを使えば、ここで証明したい「任意の複素数の平方根が存在する」ことが証明できる。実際、$a=u+v\sqrt{-1}$ と($u,v$は実数)としたとき、$x=\sqrt{(u+\sqrt{u^2+v^2})/2}$, $y=v/(2x)$ と定めれば、$(x+y\sqrt{-1})^2=a$ となる。証明終わり。コメント:なお、ここで用いた「任意の正の実数の平方根が存在する」は、関数$x^2$ の連続性と中間値の定理を使って証明されるので、この補題が(補題4.17.2 の上の行にあるように)「解析的な考察」であることには違いはない。
- p273, 1.2.4 の「解答例」は「答え」。
- p273, 1.2.5 の解答例。例えば $n=2$ のとき、
$I$ の2つの元 $p,q$ に対して、
写像 $\phi_1, \phi_2 : \{ 1,2 \} \rightarrow I$ を
$\phi_1(1)=p, \phi_1(2)=q$,
$\phi_2(1)=q, \phi_2(2)=p$ と定める。
$a_1(1,0) = 5$, $a_2(0,1)=$ と定める。
$(a_1,\phi_1), (a_2,\phi_2) \in X_2$ は異なる元であるが、
$(a_1, \phi_1)$ および $(a_2, \phi_2)$ の定める多項式は
$5 x_p$ であると考えたいので、何らかの同一視の操作が必要になると考えられる。このことは、無限変数になる前の2変数多項式環のレベルでも生じている。
- p274, 1.3.9 のヒント。$ad-bc=0$ の時は、
単射でないことを示す、という方針はどうだろうか。
実際、
$\alpha x + \beta y$ の像が零になるような$(\alpha,\beta) \neq (0,0)$ の存在を
証明することができる。そして、その解法だと、条件
$ad-bc\neq 0$ が関係してくる理由も納得しやすい。