位相の試験の答案に書かれていた幾つかの誤解。
開集合と閉集合に関する誤解
- 開集合でない集合は閉集合である。答え
- 閉集合でない集合は開集合である。答え
- 開集合は閉集合でない。答え
- 閉集合は開集合でない。答え
- 開集合でも空集合でも全体集合でもない集合は閉集合である。答え
- 全ての集合は開集合か閉集合である。答え
- 開集合の補集合は閉集合である。閉集合の補集合は開集合である。答え
位相
- 位相の公理 (Oiii) は $O_n \in \mathfrak{O} (n=1,2,\ldots)$ ならば $\cup_{n=1}^\infty O_n \in \mathfrak{O}$ と同値である。答え (例:$S$ を非可算集合、例えば$\mathbb{R}$ とする。
$O \in \mathfrak{O} \Leftrightarrow$ 「 $O\subset S$ はたかだか可算集合、あるいは $O=S$」と定める。この $\mathfrak{O}$ は、この性質は満たすが $(Oiii)$ は満たさない。)
- 密着位相でない位相は離散位相。答え ( 他にも位相はいっぱいあります。)
写像
- 全単射で連続であれば同相写像である。答え ( 逆写像が連続とは限らない。例えば、離散位相から密着位相への恒等写像。)
- $\mathbb{R}$ から $\mathbb{R}$ への全単射連続写像は同相写像である。答え ( 証明:$y=f(x)$ とする。任意の $\varepsilon \gt 0$ に対して、$\delta=\min(|f(x+\varepsilon) - y|, |f(x-\varepsilon)-y|)$ とする。この時、$\delta \gt 0$ であり、「$|z-y| \lt \delta$ ならば、$|f^{-1}(z)-x|\lt \varepsilon$」 が示せるので $f^{-1}$ は $y$ で連続。)
その他(書き方、など)
- 距離空間とは限らない位相空間で ball $B(x; \varepsilon)$ を使った議論をしてしまう。答え
- 「$M \in \mathfrak{P}(S)$ ならば $M^\circ \subset S$」 は常に成立する。答え ( 開核の条件の書き誤り。いつも成り立ってしまっているので条件とならない。)
- $x \in (M \cap N)^\circ$ ならば $x$ は「開集合の元」であり、$x \in M^\circ$ となる。。。
「開集合の元」は「$M$ の内点」と書くべし。
- 開核の性質(2.3)「$O \in M, O \in \mathfrak{O} \rightarrow O \subset M^\circ$」答え 最初が $O \subset M$ の書き誤り。
基底
- 基底から準基底は一意に決まる。答え
- 準基底から基底は一意に決まる。答えはyes/no。「p168, (3.1) のプロセスで決まる基底$\mathfrak{M}_0$」という意味であれば一意であるが、この書き方だとそう意味しているかどうかが読み取れない。
- $\mathbb{R}$ の任意の部分集合は $\{ [a,b] \mid a \lt b \}$ の形の集合の和集合で表せる。
答え (例えば、1点集合 $\{5\}$ を表せない。
- 任意の集合は1点集合の和集合で表せる。答え ( $M= \cup_{x\in M} \{x\}$.)
直積位相
- 直積集合の開集合は $O_1 \times O_2$ と書ける。答え
- 直積集合の閉集合は $A_1 \times A_2$ と書ける。答え
- 直積集合の開集合は $O_1 \times O_2$ の形の集合の有限個の和集合で書ける。答え (例:$\mathbb{R})^2$ の円板。)
- 直積集合の開集合は $O_1 \times O_2$ の形の開集合の和集合で書ける。答え
対角線への埋め込み
- $x \mapsto (x,x)$ で与えられる写像 $S \rightarrow S \times S$ は恒等写像である。答え
- $D:= \{(x,y) \in S \times S \mid x=y \} \subset S \times S$ とする。
$x \mapsto (x,x)$ で与えられる写像 $S \rightarrow D$ は恒等写像である。答え
( 全単射ではあるが、$S=D$ ではないので、恒等写像ではない。)
無限個の直積
- $(0,1)$ と $\mathbb{R}$ は同相であるから、
$\prod_{i=1}^\infty (0,1)$ と$\prod_{i=1}^\infty \mathbb{R}$ は同相である。
$\prod_{i=1}^\infty \mathbb{R}$ は $\prod_{i=1}^\infty \mathbb{R}$ の開集合だから、
$\prod_{i=1}^\infty (0,1)$ も$\prod_{i=1}^\infty \mathbb{R}$ の開集合である。答え
- $\prod_{i=1}^n (0,1)$ は $\prod_{i=1}^n \mathbb{R}$ の開集合である。答え
- したがって数学的帰納法により、$\prod_{i=1}^\infty (0,1)$ も$\prod_{i=1}^\infty \mathbb{R}$ の開集合である。答え