野村隆昭:微分積分学講義(共立出版)
- 講義準備をした上での注意点。
- コメントの分量が多くなって来たので3つのパートに分けます。また、著者のページに掲載済みになったものは * をつけて、後置します。
- 著者自身によるページ
教科書の記述に対して、補足しておきたいこと
- page 244, 問題7.65 の解答の最後の行の分数の分母の指数は$2$ でなくて$3$.
- page 239, 問題7.36 の解答。$D$ は原点 $(x,y)$ を含むのだが、「$D$ から原点を取り除いた部分」を扱う方が安全である。例えば、$D'$ と1対1に対応するのは $D$ から原点を取り除いた部分である。また、$\Phi$ を $D$ からの写像とすると原点で定義できない。教科書では注意深く $\Phi^{-1}$ を $D'$ からの写像と書いていて、この書き方だと $D$ から原点を除いて部分への全単射となる。もちろん、$D$ から1点を取り除いても、積分値には影響はない。
- page 159, なかほど。「$l_1$ と $l_2$ が曲線$f(\mathbf{x})=0$ を$o(\Vert \mathbf{x} - \mathbf{a} \Vert^2)$ で近似する」、のところ。例えば、$f(x,y) = x(y-x^2)$ は原点で結節点を持つ。この時には、「$x$ 軸が放物線 $y=x^2$ を $o(x^2)$ で近似する」と考えるのだろうか? $O(x^2)$ なら分かるのだが。
$\displaystyle 4\int_0^{\frac12} \sqrt{1-t^2}dt = 4 \int_0^{\frac\pi6} \cos^2\theta d\theta= 2 \int_0^{\frac\pi6} (1+\cos2\theta) d\theta$
$= \displaystyle \left[ 2\theta + \sin 2\theta\right]_0^{\frac\pi6}=\frac\pi3+\frac{\sqrt{3}}2.$
ゆえに $I=\displaystyle\int_0^1 J(x) dx = \left( \frac\pi3+\frac{\sqrt{3}}2 \right) \int_0^1 x^2 dx= \frac\pi9+\frac{\sqrt{3}}6$ となる。
とできる。
- page 2, line 9-10. 「空集合は任意の集合の部分集合となる」ことが「約束」されているが、これは、(line 6-7 の部分集合の定義に基づいて)証明できる命題である。なお、数学の本における「約束」とは、「定義」の一種である。(そのことはこの本では書かれていない。)
- page 8. この本では、単射であれば(全射でなくても)逆写像を考えていることに注意。逆写像は全単射について考える、という流儀もあるため、注意しておく。
- page 17, 問題2.19. 問題の置かれている位置から、直前の注意2.18「高校で習得した方法」をふまえた練習問題と思えるが、証明の途中で使われる式 $\displaystyle \lim_{n\to\infty} 3^{1/n} =3^0$ の成立根拠について補足しておきたい。すなわち、この式は、命題2.14 や命題 2.16 のような議論だけからは従わない。巧妙な工夫すれば、命題2.14 や命題2.16と同じレベルの証明をここで与えることは可能かもしれないが、それは現実的ではなく、この式の証明については例えば、後に出てくる問題2.33の必要条件(易しい方)を参照するのがよいだろう。すなわち、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} 3^{1/n} = 3^{\lim_{n\to\infty} 1/n} = 3^0$ とする証明を与えることができる。問題2.19を解くときにはこの式の証明を与えることは期待されていないと解釈した方がいいであろう。
- p113, 問題5.99(2) の解答 p255. 提示されている変数変換が巧妙にすぎる感じを受ける(5.7.1 の観点を認めれば不自然ではないが)。まずは、$x^2=t$ とおくことで、$I= \displaystyle\int_1^\infty \frac{dt}{2t\sqrt{t-1}}$ と書き直す。そのあとでは、$\sqrt{t-1}= u$ とおくことに気がついて、$I=\displaystyle\int_0^\infty \frac{du}{1+u^2}$ とする。
- p113, 例題5.100. 変数変換として、直前のリード文にあるようなもの($\tan \frac x2 = t, \tan x =t$) を使うのが自然であろう。例えば、代案として、次のような小問を使って解くことが考えられる。(1) $t=\tan(\theta/2)$ と置換することで、$I(\sqrt{ab}, \frac{a+b}2) = \displaystyle\int_0^\infty \frac{dt}{\sqrt{(at^2+b)(bt^2+a)}}$ となることを示せ。
(2) $s=\tan\theta$ と置換することで、$I(a,b) = \displaystyle\int_0^\infty \frac{ds}{\sqrt{(b^2s^2+a^2)(s^2+1)}}$ となることを示せ。(3) $t=s\sqrt{b/a}$ と置換することにより、$I(\sqrt{ab}, \frac{a+b}2)=I(a,b)$ であることを示せ。
- p113, 解説。「対称性を考慮して」とあるが、ここに書かれている変換がなぜ、対称性と関係があるのか、わからず。
- page 120, line -3 で $x=\sqrt{t} y+t$ と変数変換しているが、page 121, line 6 では $x=\frac{y}{\sqrt{t}}$ という異なるが似ている変換を同じ文字たちに対して導入している。これは紛らわしい。
教科書の題材に対する追加の分析
- page 13, 例題2.6. 証明の補足。本質的には本の証明と変わらないが、「$\alpha=0$ の場合に帰着する」ということをまず宣言するのが私の趣味。すなわち、$b_n := a_n - \alpha$, $t_n = \displaystyle\frac{b_1+\cdots+b_n}{n}$ と定義する.
ここで説明のために以下の4つの主張を番号をつけて
(1) $\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n=\alpha$, (2) $\displaystyle\lim_{n\to\infty} b_n = 0$,
(3) $\displaystyle\lim_{n\to\infty} t_n =0$, (4) $\displaystyle \lim_{n\to\infty} s_n = \alpha$ と定める。このとき、$t_n = s_n-\alpha$ なので、(3)と(4) は同値、(1)と(2) は定義より同値なので、(2)$\Rightarrow$(3) が示せれば、目的である (1)$\Rightarrow$(4) が示せることになる。ここから教科書の「解」を$\alpha=0$ として読めばよい。
- page 14, 問題2.7. 同じように$\alpha=0$ に帰着する技術を使う。この問題の場合は、簡略化の効果がより大きいと思われる。すなわち、$b_n = a_n- \alpha$, $T_n = \displaystyle \frac{nb_1+(n-1)b_2+\cdots+2b_{n-1}+b_n}{n^2}$ と置くと、$S_n = T_n +\displaystyle\frac{n+(n-1)+\cdots+2+1}{n^2}\alpha$ となるので、$\alpha=0$ の場合に示せばよい。
ここで、$\displaystyle\left\vert S_n \right\vert \le \frac{n\left\vert a_1 \right\vert +(n-1) \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+2 \left\vert a_{n-1} \right\vert + \left\vert a_n \right\vert}{n^2}
\le \frac{n\left\vert a_1 \right\vert +n \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+n \left\vert a_{n-1} \right\vert +n \left\vert a_n \right\vert}{n^2}=\frac{\left\vert a_1 \right\vert + \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+ \left\vert a_{n-1} \right\vert + \left\vert a_n \right\vert}{n}$ となる。
$\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n=0$ ならば、$\displaystyle \lim_{n\to\infty} \left\vert a_n \right\vert =0$ であり、例題2.6 より、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\left\vert a_1 \right\vert + \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+ \left\vert a_{n-1} \right\vert + \left\vert a_n \right\vert}{n}=0$ なので、「はさみうちの原理」(命題2.16(2)) により、$\displaystyle \lim_{n\to\infty} S_n =0$ である。
- page 25, 定理3.4 の証明の後半の段落。背理法が使われているが、本の証明を少しだけ書き換えることで、背理法を避けて次のようにも記述できる。まず、「$\forall \alpha \in A, \exists c \in A$ s.t. $\alpha < c$」を示す。証明: $\alpha$ は $S$ の上界ではないので、$\exists s_1 \in S$ s.t. $\alpha < s_1$. このとき、$c := \frac12(\alpha+s_1)$ を考えると、$\alpha < c < s_1$ である。$c<s_1$ より $c$ は $S$ の上界ではないので、$c \in A$ である。証明終わり。この「...」は、「$A$に最大数がない」ことを意味する。(念のために証明:「$A$に最大数がある」とは「$\exists \alpha \in A, \forall c \in A$, $\alpha \ge c$」である。この否定命題がまさに「...」である。証明おわり。)従って Dedekind の公理から、$B$に最小数がある。すなわち、$S$の上界に最小のものがあることが示された。\qed
- page 28, 簡単な1次分数変換を使うことで、命題3.14. (2) を使って(1) を証明したり、(1) を使って(2) を証明したりすることが可能である。例えば、(2) を使って、(1) を証明してみよう。$\alpha \notin A$ とする。$B= \{ 1/(\alpha - a) \mid a \in A \}$ とする。$B$ は上に有界でないので、(2)より、$a_n \to \infty$ となる数列 $\{ a_n \}$ が存在する。$\{ \alpha - \frac1{a_n} \}$ は (1) の条件を満たす数列である。証明終わり。
実際、(2) の $a_n$ を $b_n$ と書くと、$b_n = 1/(\alpha-a_n)$, $a_n = \alpha - (1/b_n)$ という変換で、証明まで込めて互いに移り合える。(だから、(1) でも (2) と同様に定理3.13を使っていない、ということに気がついた。)
- page 154, 問題 6.78. なお、$x=\displaystyle\frac1y (\mbox{Arcsin}(y/\sqrt{2}) - \frac{\pi}{4} )$ である。この逆関数を求める問題とも解釈できる。注意 6.80 にあるように、例題 6.79 も逆関数のTaylor 展開を求める問題とも解釈できるため、題材がややかぶっているとも言える。
- page 154, 例題6.79. 答えの解釈。$1/n^3$の係数が複雑な形をしているが、正体は、$x_n = \displaystyle \left(n+\frac12\right) \pi - \frac1\pi \left(n+\frac12\right)^{-1} - \frac2{3\pi^3} \left(n+\frac12\right)^{-3} + o((n+\frac12)^{-3})$ となっているものを $n$ 冪で再展開したため、異なった項からの寄与が足されていることによる。
- page 160, 問題6.92(3). 解答では有界性を論じているが、それを得るためならば、次のように議論できる。極座標 $x=r \cos \theta, y=r \sin \theta$ を代入して、$f=r^4(\cos^4\theta+\sin^4\theta) -4 r^2 \cos \theta \sin \theta$ より、$r^2 = \displaystyle \frac{4 \cos\theta \sin \theta}{\cos^4\theta+\sin^4\theta}$ となることがわかる。分母は正である。従って、$r$ は$\theta$ の連続関数であり、$0 \le \theta \le 2\pi$ の範囲で最大値を持つ。特に有界である。
- Section 6.11と 6.12の構成に関して。内容を、(a) これは、「ひとつの(あるいは1種類の)」関数の、「非特異点の」周りでの考察、 (b) ひとつの(あるいは1種類の)関数の「特異点」での考察。(c) 2種類の関数(束縛関数と目的関数)に関する未定乗数法、に分ける。(b) と (c) はどちらを先にやるべきか迷うところだが、(a) が(b)(c) よりも前にくることは確かであろう。陰関数定理の応用ができるのは非特異点の周りでの解析である。特異点の解析(定理6.88) は陰関数定理が適用できないので、陰関数定理より高級な話題である。未定乗数法は非特異点の周りの解析である。(a)(b)(c)それぞれの内容がどの部分に相当するかを書いておく。
(a) Section 6.11 を p158 の中程の「点P$(a,b)$ が $N_f$ の非特異点であるとき、、、平行である。」までしたあとで、Section 6.12, page 161 の下から4行目に飛んで、「一般に関数、、、」から、次のページの注意6.96 の終わり「、、、直ちにわかる。」までをやってしまう。次に、p165, 5行目の「さて、、、」からこの節の最後までの部分で、空間曲面、空間曲線の場合の陰関数定理の応用を行う。
(b) 6.11 節, p158 の定理6.88の3行上からこの節の終わりまで、ならびに、
「6.12節、p163 の下から7行目から、定義6.98の後ろの解説まで」。
ただし、この「、、」の部分は、用語の定義をしているだけなので、教科書の配列と同様、(c) の定理6.99と組み合わせてもいいと思う。
(c) 6.12 節の定理6.94 の証明までと、p162 中程の「定理6.94 の解説に戻ろう。、、、問題6.97」まで。ならびに、p164, 定理6.99 とその証明。
- p164, line 2. 「階数は0でない小行列式の最大次数に等しい。」階数は、のところの切れ方が読みづらい。うまい代案はないが、たとえば「行列の階数は、その行列の0でない小行列式の次数の最大値に等しい。」
- p164, line 3. 「持ち得る最大の階数」。上の行を引きずっていない、ということを「一般に」という形容詞で表している。つまりは、「行と列の長さの小さい方と同じ階数を持つ行列」ということ。
- p165 の5行目からこの節の終わりまでの部分は、条件付き極値問題とは関係なく、陰関数定理の応用である。
- P166, 注意6.102(1) の$x$ による曲線のパラメータ表示から直ちに、この曲線が、$(x,y,z)=2( \sin^2 \theta, \sin \theta \cos \theta, \cos \theta)$ とパラメータ表示できることが従う。一見、非特異有理曲線に見えてぎょっとするが、$\theta=\pm \pi/2$ で $(x,y,z)=(2,0,0)$ と重なること(8の字の形になるの)がミソ。この曲線は平面曲線ではないが、その特異点$(2,0,0)$は、定理6.88(2) の結論の結節点(node) の条件を満たしていると言える。なお、このパラメータ表示における微分は零(や無限)にならない(速度は零にならない)ので、曲線は$\theta$ に関しては局所的に非特異である。このことは、点 $(2,0,0)$ が $N_{\mathbf F}$ の特異点であること(同じ注意6.102(2))には矛盾していない。
- p173, 例題6.130(2) の解答。ここでの解法とは異なるが、答えの複雑な数字の背景を分析しておく。$x,y,z$ の符号を独立に変えることができるので、束縛条件は $(x^2+y^2+2z^2-4, x^2y^2z^2-1)$ としても同じである。$X=x^2,Y=y^2,Z=z^2$ とすると、束縛条件は$(X+Y+2Z-4, XYZ-1)$と書ける。ただし、$X \ge 0, Y \ge 0, Z \ge 0 $ を記憶しておく必要がある。目的関数は $f=X+Y+Z$ である。さらに座標変換して、$s=X+Y, t=X-Y$ とする。束縛条件は、$(s+2Z-4, (s^2-t^2)Z-4)$ と書ける。不等式条件は、$s\ge |t|, Z\ge 0$ である。目的関数は $f=s+Z$ である。変数$t$ の入り方に着目すると、$u=t^2$とおくことで、束縛条件が $(s+2Z-4, (s^2-u)Z-4)$ と書ける。不等式条件は $s\ge 0, s^2 \ge u \ge 0, Z\ge 0$ である。目的関数は $f=s+Z$ のままである。束縛条件は、1パラメータの曲線として書けて、$s=4-2Z, u= s^2-4/Z = (4-2Z)^2 - 4/Z =4 (Z-1) (Z^2-3 Z+1)/Z$ と解ける。不等式条件は $0<Z\le 2$ かつ $u \ge 0$ である。これは、$(3-\sqrt{5})/2 \le Z \le 1$ と書き直せる。目的関数は $f= 4-Z$ である。以上より、最大最小問題が解けて、$Z=1$ で $f=3$ が最小、$Z=(3-\sqrt{5})/2$ で $f=(5+\sqrt{5})/2$ が最大となる。最大最小のいずれでも $u=0$, $t=0$ となり、$X=Y$ である。その値は、最小値を与えるときは $X=1$, 最大値を与えるときは $X=\sqrt{5}+1$ である。まとめると、
最小値のときは、$(X,Y,Z)=(1,1,1)$, $s=2$, $t=0$, $u=0$, $f=3$ である。
最大値のときは、$(X,Y,Z)=(\sqrt{5}+1, \sqrt{5}+1, (3-\sqrt{5})/2)$, $s=2(\sqrt{5}+1), t=0, u=0$, $f=(5+\sqrt{5})/2$ である。
- p173, 問題 6.131. 上のパラメータ表示を用いると、$f= 7+ 2(\cos(2\theta)+\sin(2\theta)) = 7+2 \sqrt{2} \sin(2\theta + \frac{\pi}{4})$ となるので、 $f$ の最大値最小値が$7 \pm 2\sqrt{2}$ であることが、すぐに分かる。この解法は、注意6.127(2) に示唆されている解答である。
- p187, 例題7.24(2)の解。この節の内容とは外れるが、やはり、中の積分で、$x=yt$ と変数変換すると、$\displaystyle \int_1^y \frac{dt}{t^2+1}$ となる。ここでこの積分を逆三角関数で実行してしまえば、教科書と同じ積分計算になるが、積分を実行せず、順序交換を行うと、$\displaystyle \int_1^{\sqrt{3}} \left( \int_t^{\sqrt{3}} dy \right) \frac{1}{t^2+1} dt=\int_1^{\sqrt{3}} \frac{\sqrt{3}-t}{t^2+1} dt$ となる。
これは不定積分によって積分値がわかる。
- p197, 問題7.47. 教科書のp242の解答では、例題7.46と同じように空間の極座標を使っているが、3変数の変数変換をしないで平易に積分できる。すなわち、問題の重積分は、
$\displaystyle \int\int_{E} \int_0^{\sqrt{1-x^2-y^2}} z dz x y dx dy$, ただし、$E=\{ (x,y) \mid x^2+y^2 \le 1, x\ge 0, y\ge 0\}$ と累次積分で書ける。$z$ に関する積分は不定積分できて、$[\frac12 z^2]_0^{\sqrt{1-x^2-y^2}} = \frac12(1-x^2-y^2)$ となる。従って、問題の3重積分は、$\displaystyle\int\int_E \frac12 (1-x^2-y^2) x y dx dy$ となる。同じくこれは、
$\displaystyle \int_0^1 \int_0^{\sqrt{1-x^2}} \frac12(1-x^2-y^2) xy dy dx
= \int_0^1 [ \frac14 x(1-x^2) y^2 - \frac18 x y^4]_0^{\sqrt{1-x^2}} dx
= \int_0^1 \frac18 x(1-x^2)^2 dx
= [ -\frac1{48} (1-x^2)^3 ]_0^1
= \frac1{48}$.
- p204, 問題7.65(2) の別解。原点での発散の具合を見るのに、極座標を用いてみよう。$D$ の代わりに
$E = \{ (x,y) \mid x \ge 0, y\ge 0, (x,y) \neq (0,0)\}$ での収束発散を見るのと同じである。
($D \supset E$ であり、差集合 $D \setminus E$ 上で 被積分関数は有界連続なので可積分である。)
$E$ を極座標で表すと $E'=\{ (r,\theta) \mid 0 < r \le 1, 0\le \theta \le \frac\pi2\}$ である。
$\displaystyle \int \int_{E'} \frac{|x-y|}{(x+y)^3} dx dy = \int\int_{E'} \frac{|\cos\theta -\sin \theta|}{(\cos\theta+\sin\theta)^3} \frac{dr}{r} d\theta$ となり、変数分離している。
ここで、$r$ に関する積分は $\int_0^1 \frac{dr}{r}$ となり、対数発散している。
- p236, 問題6.129(b).
- p238, 問題7.25(2) の解答。本の解答では $x=2\sqrt{y} \sin \theta$ と置いているが、$x=2\sqrt{y} t$, $t=\sin\theta$ という2段階に置換して計算して行くことにする。$J(y) = 4y \int_0^{\sqrt{2-y}/2} \sqrt{1-t^2} dt$となる。したがって、$I= \int \int_{D'} 8 y \sqrt{1-t^2} dt dy$となる。
ここで、積分領域$D'$は、$D'=\{(t,y) \mid y\ge 0, 0 \le t \le \sqrt{2-y}/2\}$
$=\{(t,y) \mid t\ge 0, 0 \le y \le 2-4t^2\}$のように書ける。教科書はここで $t$についての積分を先に実行することとし、$t=\sin\theta$ と置換しているのだが、ここでは、$y$ についての積分を先に実行することにしよう。
$y$ についての不定積分は簡単に求まるので、
$I = \int_0^{1/\sqrt{2}} \left(\int_0^{2-4t^2} 8y dy \right) \sqrt{1-t^2}
dt
= \int_0^{1/\sqrt{2}} [4y^2]_{y=0}^{2-4t^2} \sqrt{1-t^2} dt
= \int_0^{1/\sqrt{2}} 4(2-4t^2)^2 \sqrt{1-t^2} dt
= \int_0^{1/\sqrt{2}}16(1-2t^2)^2 \sqrt{1-t^2} dt$
となる。
これで1変数の2次無理関数の積分まではこぎ着けた。
あとは、本にあるように、$t=\sin \theta$ と置換積分すると、
$I=\int_0^{1/\sqrt{2}} 16(1-2t^2)^2 \sqrt{1-t^2} dt
=\int_0^{\pi/4}16 \cos^2(2\theta) \cos^2\theta d\theta
=\int_0^{\pi/4} 8 \cos^2(2\theta) (1+\cos2\theta) d\theta
=\int_0^{\pi/2} 4 \cos^2 \varphi (1+\cos \varphi) d\varphi$
となり、とにかく、計算できる積分であることが分かった。
ここからはいろいろやり方はあるが、例えば、
p116 問題5.109 の記号を使えば、
$I=4(I_2 + I_3)$
と表示される。
$I_2 = \pi/4,
I_3 = 2/3$
なので、答えが $\pi+8/3$ になるのである。
- p 242, 問題7.48. 「極座標に変換する」ように手段を限定すると本の解答になると思うが、最後の$\varphi$ に関する積分のところが巧妙な感じなので、別解を考えてみる。まず、積分を計算する前に領域の形について考察する。Step 0: $(x,y,z) \in D$ が $x<0$ を満たしているとすると、$0 \le y^2\le 2xz$ かつ $z\ge0$ なので、$z=0$ でなければならない。このとき、再び条件 $y^2 \le 2xz=0$ より、$y=0$ でもある。したがって、$D \cap \{ x<0 \} \subset \{ y=z=0 \}$ という薄い集合になるので、積分領域から外してもよい。つまり、$D' = D \cap \{ x \ge 0 \}$ として、この上で積分すると仮定してよい。(なお、ここまでの部分の考察が、本の解答では明示的でない。)
Step 1: 次に領域の境界に出てくる2次式 $2xz$ を対角化するために、
$x=(u-v)/\sqrt{2},
z=(u+v)/\sqrt{2}$ と変数変換(置換積分)する。$(x,z)$ 平面上での45度の回転である。
そうすると、
$dxdydz=dudvdy$ であり、被積分関数は
$(u+v)/\sqrt{2}$
となる。積分領域は
$D''= \{(u,v,y) \mid u-v \ge 0, u+v \ge 0, u^2+v^2+y^2 \le 1, y^2\le u^2-v^2 \}$
となる。最初の2つの不等式から、$u \ge \left|v\right| \ge 0$ となり、$u\ge 0$ が成り立つ。
逆に、$u\ge 0$ と最後の不等式 $ y^2\le u^2-v^2$ が成り立っていれば、$u \ge \left|v\right|$ となる。従って、$D''= \{(u,v,y) \mid u\ge 0, u^2+v^2+y^2 \le 1, v^2+y^2\le u^2 \}$
$= \{(u,v,y) \mid u\ge 0, v^2+y^2 \le \min(u^2, 1-u^2) \}$ である。なお、計算に直接必要ではないが、この立体 $D''$ が球と円錐の交わりで表される立体であること、特に$u$ を回転軸とする回転体であることがわかる。 Step 2: 領域の考察を終えて、積分に移る。
被積分関数 $\frac{u+v}{\sqrt{2}} dudvdy$ のうち、
$v dv$ の方は奇関数の積分であり、領域 $D''$ が $v\mapsto -v$ で対称なので積分値は零である。
したがって、$u$ の方の積分だけが残って、
$I = \frac{1}{\sqrt{2}} \int_{D''} \frac{u}{\sqrt{2}} du dv dy$となる。$u$ を固定したときの $(v,y)$ に関する積分は円の面積 $\pi g(u)$ となる。ここで、$g(u) = \min(u^2, 1-u^2)$ である。従って、
$I = \int_0^1 \frac{u}{\sqrt{2}} \pi g(u) du$ となる。これで1変数の多項式の積分になった。 Step 3: あとはどのようにしても計算できる。たとえば $u=\sqrt{t}$ と置くと、
$I= \int_0^1 \frac{1}{2\sqrt{2}} \pi g(\sqrt{t}) dt
= \frac{\pi}{2\sqrt{2}} \int_0^1 \min(t, 1-t) dt
= \frac{\pi}{2\sqrt{2}} \times \frac14
= \frac{\pi}{8\sqrt{2}}$.
最後の積分は三角形の面積である。計算終わり。
この解法だと、難しい関数の積分(例えば例5.73)を使わずに答えの数値が求まるのが不思議である。
著者のページで対応済みとなったコメント
- * page 21, 問題2.33. やさしい方(必要条件)「$\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n = a$で $f(x)$ が $x=a$ で連続ならば、$\displaystyle \lim_{n\to\infty} f(a_n) = f(a)$」を今後しばしば使うので、その主張ならびに証明だけを抜き出しておきたいようにも思う。(十分条件の方は、証明で $\forall, \exists$ の入った命題の否定命題を正しく書けることが要求されるため、難易度が高い。)
- * page 43, 注意4.27, line 2. 「含まれてる」は「 含まれている」が書き物としては普通。ただし、ここで1文字増やすと次の行の終わりで1行増えることになるので、このような表現をしているのかもしれない。
- * page 69, 問題4.93. 「と」する。
- * page 96, line 9. まる2。$n=1$のときは、有理関数ではなく、$\frac12\log(t^2+b^2)$ となる。これが定理5.54の(3)の $A\neq0$ の場合を産み出すので、書いておく必要あり。
- * page 99 項目[1]. 変数変換$\tan \frac x2=t$ の由来が円周の有理パラメータ表示 (5.9), (5.10) にあることを、5.7.1 節と同じように導いておきたい。具体的には円周上の点と $(-1,0)$ とを結ぶ直線の傾きを $t$ としている。
- * page 170, 例題6.123. 解の冒頭の周期性。$f(x+2\pi,y)=f(x,y)=f(x,y+2\pi)$ としておく必要がある。