雪江明彦「代数学I,II,III」第2版。
第1版に関するコメントはochiai/yukie12。第1版と第2版で抜本的な改訂が行われていて、ページ数や定理番号などがずれてしまっている。ページ数や定理番号の引用を第2版用に書き直すのが面倒なのでここに第2版用の別のページを作ることとする。
第一巻
- I, p60, 命題2.9.2 の証明を見ると次の定理が証明されていることがわかる:「
$G$ が群、$H,K \subset G$ が正規部分群で $H \cap K = \{ 1_G \}$ とする。写像 $\phi: H \times K \to G$ を $\phi(h,k) =hk$ と定義する。この時、$\phi$ は単射群準同型である。」
- I. p141, 問題1.2.1 の解答例。間違ってはいないのだが、この設定だと$S$ が空でなければ、「$x-y$を$5$ で割った余り」に必ず$0$ が現れるから($x=y$ とすれば良い)、「各$S$ に対して$0$ を対応させる写像」となっているかどうか、という問題を扱っていることになっている。
- I. p142, 問題2.3.8(1)。それで正しいけれど、巡回群は可換、三次対称群は非可換。という理由づけもありえる。
第二巻
- II, p xi, line -2 で両辺が群の場合はこの記号$\cong$は群同型を表すと規定されているが、第1章では環準同型が断りなく頻出するので(たとえば補題1.2.27)、文脈に応じて群同型、環同型などを表すように規定しておいた方が便利な気がする。ただし、それでは何も説明していないことに等しいのかもしれないが。
- II, p131, line 8, $SL(R)$ は $SL_n(R)$.
- II, メモ。p198, 例題3.1.36(1) の多項式 $f(x)$ に $x=t+t^2$ を代入すると、$f(t+t^2)=(t^3-2)((t+1)^3+2)$ となる。
II, p267, line -1. $x=t+t^2+t^4$ を代入すると、
$x^2+x+2=(t^2-t+1)(t^6+t^5+t^4+t^3+t^2+t+1)$ となる。
II, p329, 問題3.1.15(1) で $x=t-t^2$ を代入すると、$x^3+9x+6=(t^3-3)((1-t)^3-3)$ となる。
問題3.1.19 の答 $(x^3 + 6 x - 2)^2 - 2 (3 x^2 + 2)^2=x^6-6x^4-4x^3+12x^2-24x-4$ に $x=t^2+t^3$ を代入すると $t^6-2$ で割り切れる。
- II*. p220, 問題3.1.6。「$a_1$ が $n$ と互いに素なら」を(1)から出して、リード文の中に入れる。そうすると(1) で「(2)の状況で」も不要になる。
- II*. p235, 脚注1。ダメ押しをしておくと「$x_1 x_2$ は交代式とは呼ばない」。
- II, p250, 系4.5.12, 2行目。$\mathbb{Z}/3/\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$.
- II, p237, 命題4.2.7の証明の8行目。大きな括弧の積の範囲を表す不等式の $1\leq l \lt n$の左側の $\leq$ が大きくないだろうか?
- II, p240, 定義4.3.8の2行目。行列のサイズは $(2n+1)$ ではなくて $(2n-1)$か?
- II, p241, 例4.3.11. メモ。$3(x+3/2)^2(x-3) = 3x^3-(81/4)(x+1) = f(x) - (85/4)(x+1)$.
- II, p241, 例4.3.13 と、p306, 問題4.3.1(2) の答えが一致するのだが、その2つの多項式の間に何らかの関係があるのだろうか?
- II, p288,命題4.13.7. 3行目。左側の式の右辺 $[L:K]_i$ の添字の $i$ は直後の和のrunning index $i=1,\ldots,n$ とは無関係で、p212 定義3.3.28 で定義されているものである。しかし、久しぶりの登場なので、あるいは4章から読み出した場合には初見なので、なんとか工夫できないものかなあと感じる。たとえば、添字は alg の上つき添字のように立体で書くとか、和のrunning index を $i$ と重ならないようにするとか、3章の定義の箇所を引用してリマインドするとか。
- II*. p302, 補題4.18.3 の証明。4行目。この式で定義される $x,y$ が実数であることがポイント。$x,y \in \mathbb{R}$ と書いておきたい。
4行目の式の末尾のカンマは不要。
- II. p302, 補題4.18.3 の証明。
6行目から背理法が始まるが、背理法を用いないで証明できている。すなわち、
「$\mathbb{C}$ が代数閉体ではないとして矛盾を導く。」「$d=[L:\mathbb{R}]$ が2のべきでないとして矛盾を導く。$d$ が奇素数 $p$ で割り切れるとする。」を削除。
「の位数も$p$ で割り切れる。」を「とする。」に変更。「$p$ で割り切れる。よって $m\gt 1$である。」を削除。「既約だが、これは補題4.18.2 に矛盾する。」を「既約なので、補題4.18.2 より $m=1$ となる。」に変更。「したがって、」の直後に「$[\tilde{L}:\mathbb{R}]$ は2のべきであり、」を挿入。「$[L:\mathbb{R}]$ は2のべきだが、」を「$[L:\mathbb{R}]$も2のべきであり、」に変更。「$[\mathbb{C}:\mathbb{R}]=2$ なので、」を削除する(不要なので)。
- II. p309, 問題4.9.1(1) $a$ の定義の冪がなぜこの順序なのだろう。
$a=\zeta+\zeta^2+\zeta^4+\zeta^8+\cdots+\zeta^9$ の方が規則性がわかりやすい。
- II*. p309, 問題4.10.1 の答え(p328)。このままだと $\sqrt{14} \times \sqrt{10}=2 \sqrt{35}$ なので答えが$8$になりそう。おそらく問題が正しくないのでは?
- II, p312, 問題1.3.8(3). 原文で良いのだが、グレブナ的に工夫するとすれば、6行目を
$p_1(x) yz^2+p_2(x) yz + p_3(x) y + p_4(x) z^2+p_5(x) z + p_6(x)
= p_1(x) z(yz-x^3) + p_2(x) (yz-x^3) + p_4(x) (z^2-x^2y) + (p_1(x) x^3+p_5(x)) z + (p_2(x) x^3 + p_6(x)) + (p_3(x) + p_4(x) x^2) y
= p_1(x) z(yz-x^3) + p_2(x) (yz-x^3) + p_4(x) (z^2-x^2y) + p_7(x) z + p_8(x) + p_9(x) y$
と書き直してから、7行目の代入を行う。
- II, p322, 問3.7.1(2)。「... を示さないと ... 決定できない。」
そう言われると燃えてくるので、別方法を考えてみよう。
$[\mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt[3]{3}) : \mathbb{Q}]$ は
$[\mathbb{Q}(\sqrt{2}) : \mathbb{Q}]=2$ と
$[\mathbb{Q}(\sqrt[3]{3}) : \mathbb{Q}]=3$ の公倍数なので
$6$ の倍数である。一方で、$6$以下なので$6$ である。
- II, p329, line -2, 問題4.17.1. 「多項式が既約であることを」。1行前から $t^2+t+1$ とか $g(y)$ とか $h(z)$ とか、色々な多項式が出てくるので、どの多項式か明示してもらえるとありがたい。そのぐらいはわかってよ、という著者の気持ちはわかるが、解答を見る必要がある人は、そのぐらいもわかるのに戸惑う可能性あり。
- II, p336, 索引の随伴行列の英訳。adjoint.
$A^*$ と紛らわしいため、adjugate を用いることもある。
- II, p338, 「非斉次」は索引の項目に立っていない。
したがってその英訳も与えられていない。
- II, p338, 索引「フェルマー」。ガロア、クンマー、デデキントは i ページが引用されているが、フェルマーは引用されていない。
- II, p338, 索引「普遍性(加群の直積、直和)」。この見出しだけ空白を1文字ごとに補って横いっぱいに広げてあるが、他の見出しと同様に左寄せした方が良い。
- II, p330から。参考文献、日本語と英語で分けていることは理解できるのだが、[1]-[10]の中の順序、[11]-[25]の順序がどのように並んでいるのかがわからない。たとえば、それぞれが著者アルファベット順などになっていれば、自分の知っている文献が挙げられているかどうかがわかるが、そうなっていないと全部を検索する必要がある。
第三巻
- III, p149, 補題3.2.4 は式3.2.4 または補題3.2.3 ?
- III, p171, line -13, $(x+1)^4$ は $((x+1)^4)$ ?
- III, p186 問題3.4.6 の解答。原文で正しいのだが、line -2 の後半 $g(x) \equiv 1 \mod (x)$ から $g(x) \in k[ [x] ]^\times$ がわかるので、
$k[ [x] ] = k[ [x g(x)] ]$, $k[ [x,y] ]=k[ [x g(x),y] ]$ となる。したがって
p187, line 2 のように $u,v = y \mp x g(x)$ とすれば、$k[ [x g(x), y] ] =k[ [u,v] ]$.
このような1変数の変数変換の場合は、本格的なヤコビアンの計算はしなくても同型が示せる。
- III, p231, 問題4.2.2(2) $x_1 y_1$ が2つあるのを $2x_1 y_1$ とまとめないことに
何らかの意味があるのだろうか?
- III, p364, line -1, 例7.2.14. $d(z) = \cdots + d^2$ の2つの $d$ は異なる意味の $d$.
- III, p381, line 3, 定義7.3.18. $A\to$ は $A \mapsto$ としたい。同じページの系7.3.20 の1行目も。
- III, p444, 問題2.4.2(3). このページの下から6行目で、定理2.4.2 に沿った
変数変換がなされているが、
変数変換で $s_4=t_4-t_1$ だけを施して $t_2,t_3$ は元のまま変更しないとすると、
$t_1 t_4^2 - t_2 t_3^3 = t_1 (t_1+s_4)^2 - t_2 t_3^3$ となり、
これは $k[t_2,t_3,s_4]$ を係数とする $t_1$ に関する monic な三次式なので、
$t_1$ は $k[t_2,t_3,s_4]$ 上で整であることが見やすい。
まあ大差ないけど。
- III, p457, 問題4.9.2 最後の段落のコメント。II-p251 には III-問題4.9.2 への引用が書かれているのだが、III-問題4.9.2 の解答にも II-p251 への言及があった方が良い。このコメントは有用なので。
- III, p481R, 索引。「ノルム」165 は 164 か?しかし TeX で入稿していて、そんなことが発生するのだろうか?