授業の概要†
この授業では群、環という代数学の基本対象について学びます。群は小学校で正多角形を学ぶ際に考えたような対称性を記述する概念で、数学の幅広い分野で威力を発揮する強力な道具です。環は (1) ある集合上の関数の空間や、(2) n 次正方行列の空間などの拡張になっています。(1) の例は例えば、代数幾何のように、空間を調べるのにその空間上の関数の環を見るときに現れます。一方の (2) は作用素環など、群と同じく対称性を表すのに用いられます。
群、環についての基礎事項を学ぶ際には、ただ抽象的な概念としてではなく、群や環の基本的な例を通じて実感することが必要不可欠です。そのためにはできるだけ積極的に演習に参加してそうした例に触れてください。講義中もできるだけ多くの例を挙げるようにしていきます。
最後に、ここで学ぶ内容は代数学 B, C を始め今後皆さんが学ぶ科目の前提条件となります。演習にも積極的に参加して代数的な考え方の基礎を培ってください。
教科書、参考書†
教科書は桂利行著 代数学 I 群と環 (大学数学の入門 1 東京大学出版会)を使います。基本的に教科書に沿って授業を進める予定ですが、教科書にあるすべての内容を講義するとは限りません。
授業の進め方、演習について†
午前中の授業では出席を取った後、講義を行います。
午後の演習では毎回午前中に講義した内容についての初歩的な問題を10題程度出題します。その後の進め方は次の通りです。
- 演習の時間が始まるまでに前週に出題された問題を黒板で解答しておいてください。1週間考えてもできなかった場合には、できたところまで書いてください。(この段階では、誤りや途中までしかできなかったことは大きな問題ではありません。板書は皆でその問題を考えるための題材と考えてください。)
- 演習が始まるとまず解答者の方に板書した答案を説明してもらいます。私たち教員とティーチング・アシスタントが適宜、訂正、コメントを与え、最終的に完全な答案を得られるようにします。(指導する側ではなく、まずはクラスメートがわかるように、上手なプレゼンテーションを目指しましょう。皆でノウハウを共有しようという姿勢が理解を深めます。)
- その後で、今週の問題に取り組みます。わからない点などは教員やティーチング・アシスタントに尋ねたり、クラスメートと相談して積極的に解決してください。出題された演習問題がすべて時間内に解けるわけではありません。その場合には残った問題は宿題となります。他の理系の学科に比べると数学科は実験もなく、毎日早々と授業が終わります。しかしこの残りの時間は演習問題を考えるためのもので遊び時間ではありません。 各科目で出される演習問題を考えて解いていれば、だいたい実験系の人たちと同じかそれ以降に一日が終わるはずです。
- 次回の演習問題の解答者を指名します。だいたい演習1クラスの人数が30人ほどで、毎回10題程度出題するのですから、3回に1回あたる計算になります。(後期全部でたかだか4回です。)
授業予定 (変更の可能性もあります)†
- 長月
- 神無月
- 6日 群の例、剰余類
- 8日 準同型定理
- 13日 体育の日でお休み
- 20日 直積と共役類
- 27日 群作用、可解群
- 霜月
- 3日 文化の日
- 10日 Sylowの定理
- 17日 環の定義 演習の時間は中間試験
- 24日 勤労感謝の日振り替え休日
- 師走
- 1日 部分環、環の例
- 8日 イデアルと準同型定理
- 15日 UFD、素イデアル
- 22日 PID、分数体
- 睦月
- 5日 PID上の多項式環
- 12日 成人の日
- 19日 出張のため休講
- 26日 補足と演習
- 如月
成績評価について†
成績は普段の学習状況を重視して次のように評価します。普段授業に出てこないで中間、期末試験を受けただけでは合格できませんので注意してください。
- 演習での発表内容が3割程度。(毎回10点満点で採点しています。その合計を成績に加算します。問題を解かなかった場合、解答を説明するときや解答者として指名されたときに無断欠席していた場合は0点とします。)
- 中間試験の結果が3割程度。
- 期末試験の結果が4割程度