ochiai/nomura の履歴差分(No.7) - PukiWiki

野村隆昭:微分積分学講義(共立出版)
- 講義準備をした上での注意点。
- [[著者自身によるページ>http://www2.math.kyushu-u.ac.jp/~tnomura/EdAct/books/index.html]]
- page 2, line 9-10. 空集合は任意の集合の部分集合となることが「約束」されているが、これは、証明できる命題である。なお、数学の本における「約束」とはどんなことかの定義は書かれていない。
- page 8. 単射であれば(全射でなくても)逆写像を考えていることに注意。
- page 13, 例題2.6. 「$\alpha=0$ の場合に帰着する」ということをまず宣言する。すなわち、$b_n := a_n - \alpha$, $t_n = \displaystyle\frac{b_1+\cdots+b_n}{n}$ と定義する.
ここで4つの主張を番号をつけて
(1) $\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n=\alpha$, (2)  $\displaystyle\lim_{n\to\infty} b_n = 0$,
(3)  $\displaystyle\lim_{n\to\infty} t_n =0$, (4)  $\displaystyle \lim_{n\to\infty} s_n = \alpha$ と定める。このとき、$t_n = s_n-\alpha$ なので、(3)と(4) は同値、(1)と(2) は定義より同値なので、(2)$\Rightarrow$(3) が示せれば、目的である (1)$\Rightarrow$(4) が示せることになる。ここから教科書の「解」を$\alpha=0$ として読めばよい。
- page 14, 問題2.7. 同じ技術を使う。$b_n = a_n- \alpha$, $T_n = \displaystyle \frac{nb_1+(n-1)b_2+\cdots+2b_{n-1}+b_n}{n^2}$ と置くと、$S_n = T_n +\displaystyle\frac{n+(n-1)+\cdots+2+1}{n^2}\alpha$ となるので、$\alpha=0$ の場合に示せばよい。
ここで、$\displaystyle\left\vert S_n \right\vert \le \frac{n\left\vert a_1 \right\vert +(n-1) \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+2 \left\vert a_{n-1} \right\vert + \left\vert a_n \right\vert}{n^2}
\le \frac{n\left\vert a_1 \right\vert +n \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+n \left\vert a_{n-1} \right\vert +n \left\vert a_n \right\vert}{n^2}=\frac{\left\vert a_1 \right\vert + \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+ \left\vert a_{n-1} \right\vert + \left\vert a_n \right\vert}{n}$ となる。
$\displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n=0$ ならば、$\displaystyle \lim_{n\to\infty} \left\vert a_n \right\vert =0$ であり、例題2.6 より、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\left\vert a_1 \right\vert + \left\vert a_2 \right\vert+\cdots+ \left\vert a_{n-1} \right\vert + \left\vert a_n \right\vert}{n}=0$ なので、「はさみうちの原理」により、$\displaystyle \lim_{n\to\infty} S_n =0$ である。
- page 17, 問題2.19. 直前の注意「命題2.14 を繰り返し使って」には反するが、証明の途中で使われる式 $\displaystyle \lim_{n\to\infty} 3^{1/n} =3^0$ の成立根拠を、命題2.14 の証明のレベルで与えることは、この問題では期待されていない。この事実の証明については例えば、後に出てくる問題2.33の必要条件(易しい方)も参照。
- page 25, 定理3.4 の証明の後半の段落。背理法が使われているが、次のようにも議論できる。
まず、「$\forall \alpha \in A, \exists c \in A$ s.t. $\alpha < c$」を示す。証明: $\alpha$ は $S$ の上界ではないので、$\exists s_1 \in S$ s.t. $\alpha < s_1$. このとき、$c := \frac12(\alpha+s_1)$ を考えると、$\alpha < c < s_1$ である。$c<s_1$ より $c$ は $S$ の上界ではないので、$c \in A$ である。証明終わり。この「...」より、$A$に最大数がない。よって Dedekind の公理から、$B$に最小数がある。すなわち、$S$の上界に最小のものがある。\qed
- page 28, line 3 から。「まるいち」の式より $0 < \alpha - a_{n+1} < \frac12 (\alpha - a_n)$ となる。
従って、$0< \alpha-a_n < \frac1{2^{n-1}} (\alpha - a_1)$ となる。はなさみうちの原理(命題2.16(2)) より、数列 $\{\alpha-a_n\}$ は$0$に収束する。すなわち、$\{ a_n \}$ は $\alpha$ に収束する。証明終わり。
註:この証明だと「定理3.13 を使っていない」ので、p27 の命題3.14 の3行上の「定理3.13 の応用として」という説明文に改変が必要。
- page 35, 定理 4.8 の証明。S の定義で $x,y \in I$ が必要。ところで、2変数の関数とその連続性が必要となるような議論がされているが、証明の7行を省略して、いきなり、
「$I$ の4つの元 $x_1 > y_1, x_2>y_2$ を固定する。 $0 \leqq t \leqq 1$ に対して、
$G(t) = f((1-t)x_1+t x_2) - f((1-t) y_1+t y_2)$ と定義する。」と始めて、証明できる。議論の流れは教科書と同じ。以下、「連続関数の合成並びに差も連続関数なので$G:[0,1] \rightarrow \mathbb{R}$ は連続関数である。また、$ ((1-t)x_1+t x_2)-((1-t) y_1+t y_2)=(1-t)(x_1-y_1)+t(x_2-y_2)>0$ なので、$G(t)\neq0$ である。したがって、Roll の定理の対偶によって、$G(0)=f(x_1)-f(y_1)$ と $G(1)=f(x_2)-f(y_2)$ は同符号である。正であれば$f$ は狭義単調増加、負であれば狭義単調減少である。」
- p101, line -2. 少し前の line -7 のパラメータ表示 $x=\displaystyle  \frac12\left( s - \frac 1s \right)$ で $s= e^t$ と置くと $x=\sinh t$ となる、という説明を加えたい。
- p112, 例5.96. この例で、「被積分関数は、、、、を得る」というような議論、、、のように括弧をつけたい。(してはいけないことが何なのかが読み取りづらいと思われるため。)
- p154, 例題6.79. 答えの解釈。$1/n^3$の係数が複雑な形をしているが、正体は、$x_n = \displaystyle \left(n+\frac12\right) \pi - \frac1\pi \left(n+\frac12\right)^{-1} - \frac2{3\pi^3} \left(n+\frac12\right)^{-3} + o((n+\frac12)^{-3})$ となっているものを $n$ 冪で再展開したため、異なった項からの寄与が足されていることによる。
- p186, 例題7.24(1) の解。2行目で $J(x) = \displaystyle 4x^2 \int_0^{\frac12} \sqrt{1-t^2}dt$ と特定した後で一度、$I= \displaystyle \int_0^1 4x^2 dx \int_0^{\frac12} \sqrt{1-t^2}dt$ と書いておきたい。このあとは、$x$ の積分と$t$ の積分は相互に関係なく、それぞれ1変数の積分の問題である。(そして、教科書にはその計算が書いてある。)


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