教科書「線形代数講義」(南和彦)へのコメント - 1. 行列 - 1.1. 行列の定義、和と定数倍 - 1.1.1. 行列を定義する p1 - 1.1.2. 行列の和とスカラー倍 p4 -- 等しい、和、スカラー倍の3つ。差に関する注意。 - 1.1.3. 特別な行列 p5 -- トレース、単位行列、上三角行列、下三角行列、対角行列、可換群と線型空間。成分に関するコメント -- p6 クロネッカーのデルタ。2入力1出力。 - 練習問題 1.1. p9 - 1.2. 行列の積 - 1.2.1. 行列の積 p9 -- 一次変換、確率行列、可換、零因子、積の満たす性質 --- 定理1.1(p14) の「自明」の証明。定理1.2(p16)の「自明」の証明。成分を比較する。追加説明をする予定。 - 1.2.2. 特別な行列2 p15 -- 転置行列、対称行列、交代行列。なお、定理1.2(4) 以外は行列の積とは無関係なので、1.1 節の内容とも言える。 -- 次の1.2.3節の中で扱われている例題1.4から例題1.6 と例題1.8から例題1.10の内容は分割と直接関係せず、1.2節の「行列の積」の内容であるので 1.2.2 節の中で取り扱うのが良い。それらの内容は、「可換な行列、行列の多項式、回転行列と三角関数の加法定理、トレース形式が非退化であること」 --- 例題1.4(p18). 結果の解釈。結論の式 $x-y+2=0$ が成り立つ時、$X=(x-1)E+A$ となる。 --- 例題1.5(p19). 結果の解釈。得られた行列は、順に $B,4E-3B, 3B-4E, -B$ となっている。なお、$f(x)=x,4-3x,3x-4,-x$ の $x=1$ での値はそれぞれ $1,1,-1,-1$ であり、$x=-1$ での値はそれぞれ $2,-2,2,-2$ である。 --- 例題1.9(p21) p12 と p21で行と列の役割が逆になっているのがわかりづらい。 --- 例題1.9 (1)。解の成分が $1/n$ となっているが、$1$ にした方が良い。なぜなら、この $\mathbf{x}$ は確率ベクトルではなく、条件式 $\displaystyle \sum_{j} a_{ij}=1$を表しているので。$\mathbf{x}$ の成分の総和を $1$ にすることの意味は発生しない。 - 1.2.3. 行列の分割 p17 -- 例題1.7(p20) は分割と関係している。 - 練習問題 1.2-1.20 p22-24 --- 可換な行列に関するコメント。一般に、「実数 $p,q,r,s$ に対して、行列 $pE+qA$ と $rE+sA$ は可換」。特に、$r=0,s=1$ とすれば、「$pE+qA$ と $A$ は可換」という補題が成り立つ。問題1.4 の結果の解釈がこの補題で可能である。問題1.9 でも、この補題を使うことができる。 --- 問題 1.4. 可換な場合(1)(2)(3)(6)の結果の解釈。(2) $A=E+a E_{12}$, $B=E+b E_{12}$. ここで $E_{ij}$ はp22, line 5に現れている行列で「行列単位」と言います。(3) $B=2A+E$. (6) $B=2E-A$. --- 問題 1.5(p22) 追加説明をする予定。 --- 問題 1.6(p23) どこまで計算したら結果なのかが判断しづらい問題が多い。プリントを配る予定。 --- 問題 1.7. (1) 可換である時の結果の解釈。$B=cA+(c+d)E$. --- 問題 1.8. (2)を先に、(1) を後にするのが良さそう。 --- 問題 1.9. (1) 冒頭の行列を $J$ とすると $J$ と可換な行列は $xE+yJ$ と書ける。 --- 問題 1.9. (2) 冒頭の行列は $E+E_{12}$ と書ける。それと可換な行列は $xE+yE_{12}$ と書ける。 --- 問題 1.13. $l$ 乗も求まる。(右下の行列のサイズと冪が同じ数 $n$ であることは解答で使わない。) --- 問題 1.16(p24)(2) 「$A$ が交代行列であるとき、$A^n$ が交代行列である」ような自然数 $n$、と読む。なお、この問題で、$A$ のサイズと冪の指数 $n$ を一致させる必要はない。($A$ のサイズとは無関係。) --- なお、直接関係ないが、4次交代行列 $A=\left( \begin{array}{l} \hskip1cm 0 \hskip1cm 2 \hskip1cm i (s+t) \hskip1cm s-t \\ -2 \hskip1cm 0 \hskip1cm i (s-t) \hskip1cm s+t \\ -i (s+t) \hskip3mm -i (s-t) \hskip1cm 0 \hskip1cm 2 i \\ t-s \hskip1cm -s-t \hskip1cm -2 i \hskip1cm 0 \end{array} \right)$ は $s=1/t$ の場合は、$A^3=O$ を満たす。 - 1.3 行列の正則性と逆行列 - 1.3.1. 行列の逆行列 p25 - 練習問題 1.21-1.24 p29 - 2. 基本変形 - 2.1. 行列の基本変形 - 2.1.1. 連立方程式と基本変形 p30 - 2.1.2. 基本行列(基本変形を生成する) p32 --- この教科書の p32 の $E_n(i;k), E_n(i,j;k), E_n(i,j)$ や p40 の$E_{mn}(r)$ という記号は紛らわしいし、他の本では異なる記号で書かれることもある記号である。一方で、p22 line 5の $E_{ij}$ という記号は、一般によく用いられる記号である。p23 の問題 1.13 の $E_n$ という記号もしばしば用いられる。注意すべきことは $E_n$ と $E_n(i,j)$ などはかなり異なるものをかなり似たような記号で表している点である。 - 2.1.3. 同値関係 p34 - 2.1.4. 逆行列であるための条件 p35 --- 定理2.4の証明(p35-37)が、この本で最初の本格的な証明であり、数学的帰納法の使い方を含め、きっちり学習したい。 --- 式(2.1)の一番下の行の添字 $m$ は2箇所とも $n$. --- 式(2.1)の一番下の行の添字 $m$ は2箇所とも $n$. 次のページの式(2.2) の行列やその次の行の行列も。p35, line -1 の最後の行の $m$ も $n$. - 練習問題 2.1-2.3 p38 - 2.2. 行列の階数 - 2.2.1. 階数を定義する p38 --- 定理2.5の証明。(1) は存在、(2) は一意性を証明している。このように示すべき内容をしっかりと分けて記述するのは望ましい。 --- 定理2.5の証明(1)(p40)は、自分で補うことが求められている難易度の高い記述である。「同様にして」や「同じ手順を繰り返し」のような部分をきちんと書き下すことが必要だが、なんとなくわかっているんだけど書きづらい、ということが起こり得る。作文力をつけていく問題である。 --- 定理2.5の証明(2)(p40-41)は、このまま読んでいけば良い記述である。なお、証明の前半、p41, line 3 までは、「$A=E(s)$ として良い」という reduction という証明の技術の一例になっている。 - 2.2.2. 階数、基本変形と逆行列 p42 - 練習問題 2.4-2.8 p45 --- 問題2.5. より一般に $m\times n$ 行列で、正しい。実際、解答(p338) で、正方行列であることは使われていない。 --- 問題2.7. 「補題。正方行列 $A$ とベクトル $\mathbf{x} \neq \mathbf{0}$ が $A\mathbf{x} = \mathbf{0}$ を満たすならば、$A$ は正則行列ではない。」を証明しておけば、別解が得られる。今の問題の場合、 $\mathbf{x} = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ -1 \\ 1 \end{pmatrix}$ とすると、$A \mathbf{x} = \mathbf{0}$. --- 問題2.8(2) 「補題。小行列の階数は元の行列の階数以下である」を準備しておくと良い。解答(p339) で、その事実が何度も使われている。 - 2.3. 連立一次方程式 - 2.3.1. 連立一次方程式 p46 -- p48-49 で$r$ 行より下に$0$ でない成分 $\beta_{r+1},\ldots,\beta_m$ が残る場合、さらに基本変形を続けて $\beta_{r+1}=1$, $\beta_ {r+2}=\beta_{r+3}=\cdots=\beta_n=0$ のようにするのが普通である。この時、$\mbox{rank}\tilde{A}=\mbox{rank}A+1$ となっている。(p49 の $\mbox{rank}\tilde{A}\gt \mbox{rank}A$ よりも強い主張。) - 2.3.2. 斉次(同次)方程式 p49 - 練習問題 2.9-2.13 p55 - コラム LU 分解 p56 - 3. 行列式 - 3.1. 行列式 - 3.1.1. 置換とその符号 p57 - 3.1.2. いくつかの例 p62 - 3.1.3. 2次の行列式 p63 - 3.1.4. 3次の行列式 p64 - 3.1.5. $n$次の行列式 p65 - コラム 行列式と関孝和 p67 - 練習問題 3.1-3.2 p68 --- 3.1 節の問題ではあるが、後で学習する3.2-3.4 節の計算方法などを積極的に用いて差し支えない。 - 3.2 行列式の性質 その1 - 3.2.1. 転置行列の行列式、交代性、基本的な性質 p68 - コラム 行列式の公理的な定義 p72 - 3.3. 行列式の性質 その2 - 3.3.1. 積の行列式、行列式の展開 p73 --- 例題3.3(p77) 結果の解釈。(1) $x=1$ の時、第1列と第2列が一致。$y=1$の時、第1列と第3列が一致。$y=x$ の時、第2列と第3列が一致。(2) $x=-1$ の時に、第2列と第4列が一致。$x=1$ の時に all-one-matrix であり、その階数が$1$ である。 - 練習問題 3.3-3.7 p79 --- 問題3.3(3) 第4行に第1行を足してみると。。。 --- 問題3.4(3) では問題3.6 を使うこともできる。 --- 問題3.5(2). 実数を成分とする行列を考えている。複素数を成分とする行列では反例がある。 - 余因子展開 p79 - 3.4.1. 符号に関する準備 p80 - 3.4.2. 行列式の展開公式 p81 - 練習問題 3.8-3.11 p87-88 - 3.5. 逆行列、Cramer の公式、特殊な行列式 - 3.5.1. 逆行列 p88 - 3.5.2. 連立1次方程式の解の公式 p91 - 3.5.3. 小行列式 p92 --- p93, 定理3.18 の証明。それで正しいけれど、「A の $(s-1)$次の小行列式が全て0ならば、A を基本変形した行列の$(s-1)$次の小行列式も全て0。」を示した方がわかりやすい。式は同じだが無駄な場合分けが必要なくなるので見通しが良くなる。 - 3.5.4. いろいろな行列式 p93 --- p95 の中程の式。$A=\begin{pmatrix} a_1 \hskip5mm a_2 \hskip5mm a_3 \\ a_3 \hskip5mm a_1 \hskip5mm a_2 \\ a_2 \hskip5mm a_3 \hskip5mm a_1 \end{pmatrix}$, $P=\begin{pmatrix} 1 \hskip5mm 1 \hskip5mm 1 \\ \omega_1 \hskip5mm\omega_2 \hskip5mm \omega_3 \\ \omega_1^2 \hskip5mm \omega_2^2 \hskip5mm \omega_3^2 \end{pmatrix}$, $\Lambda= \begin{pmatrix} a_1+\omega_1 a_2+\omega_1^2 a_3 \hskip5mm 0 \hskip5mm 0 \\ 0 \hskip5mm a_1+\omega_2 a_2+\omega_2^2 a_3 \hskip5mm 0 \\ 0 \hskip5mm 0 \hskip5mm a_1+\omega_3 a_2+\omega_3^2 a_3 \end{pmatrix}$ とすると、line 9-10 の行列の等式は $AP=P\Lambda$ となる。(p202 のあたりで再登場する。) この式の両辺の行列式を考えると、$\det A \det P = \det P \det \Lambda$ となる。教科書では $\det P \neq 0$ なので $\det A=\det \Lambda$ を得ている。 - 練習問題 3.12-3.17 p97-98 --- 問題3.12. $A$ が正則行列の時の証明がポイント。$A$ が正則行列でない時にどうするかも小ポイント。後半は教科書の解答(p342)には詳述されていない。 - 4. $n$ 次元空間のベクトル - 4.1. 空間ベクトルの性質、線型独立と線形従属 - 4.1.1. 空間ベクトルの性質 p99 - 4.1.2. 空間ベクトルの線型独立と線形従属 p100 - 4.1.3. 線型独立性と行列の階数 p103 - 4.1.4. 線形独立性と連立一次方程式 p104 --- p107, 定義4.2. 成す角はどちらも零ベクトルではない場合のみ定義する。 --- p107, 定理4.5(1) の証明。2次方程式の判別式を使うのは a が零ベクトルではない時。a が零ベクトルの時は示したい式の両辺が0なので成立する、という風に別扱いする。 - 練習問題 4.1-4.2 p105 - 4.2. 空間ベクトルの内積と外積 - 4.2.1. 内積 p105 - 4.2.2. 外積 p108 - 4.2.3. 空間図形の方程式 p112 - 練習問題 4.3-4.6 p114 --- p114, 練習問題4.3(1)。p344の解答「定義に従って成分で書いて」という指示にやや混乱が見られる。定義4.3(p108) では成分で定義されておらず、ここでの定義で書かれている外積ベクトルの大きさを見ると、直ちに証明できてしまう。おそらく出題の趣旨は、「定理4.8(p110)の表示式で外積を定義したとした時に、練習問題4.3(1)を示せ」というものであろうと思われる。 - 5. 線型空間 - 5.1. 線型空間 - 5.1.1. 線型空間の公理系 p115 - 練習問題 5.1-5.8 p123-124 --- 後の 5.3 節の定義5.9(p142)に登場する「部分空間」の概念や性質を使うと議論しやすいでしょう。 - 5.2. 基底と次元 - 5.2.1. 線形独立と線形従属 p124 - 5.2.2. 線型空間の基底 p129 - 5.2.3. 基底の存在と次元の一意性 p133 - 練習問題 5.9-5.13 p136 - コラム 線形と線型 p137 - 5.3. 部分空間 - 5.3.1. 部分空間の定義と例 p137 - 5.3.2. 部分空間であるための条件 p141 - 練習問題 5.14-5.20 p145-146 - 5.4. 和空間、直和、直積 - 5.4.1. 和空間と直和 p145 - 5.4.2. 線形空間の直積 p152 - 練習問題 5.21-5.27 p156-157 - コラム 直積と量子力学、量子情報 p158 - 6. 線形写像 - 6.1. 線形写像 - 6.1.1. 写像 p159 ノートを取る技術。板書されていないことのノートの取り方。理解していないことをノートして後での理解に役立てる。写真、動画、録音の活用。教科書や配布資料の活用。データ整理。 レポートの書き方、報告書の書き方、証明の書き方。読み手がわかっているかどうか。 用語の定義、概念の把握、概念の創造。「明らか」の証明を書く技術。induction と reduction。補題の活用。line-by-line。基本では、一つの変形では一つのことを。(取って投げる、トラップして蹴る、左手だけ。) Dedekind の切断。